神山健治監督、アニメは最大の武器 『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』に見出した可能性
Q:原作でわずか11ページほどしかないヘルム王の物語をベースに、どのように物語を拡大していったのでしょうか?
ヘルム・ハンマーハンドのエピソードは原作ファンや映画ファンの間でも、よく知られています。しかし、エピソードとしては短く、原作も客観的に書かれているので、どういう人間だったのかは、そこまで掘り下げられていません。だからこそ、映画にしてヘルム王が何を思って、なぜローハンが一度衰退してったのかを描く面白さがあります。
また、物語を通して、最後までこの顛末を客観的に見届ける登場人物が必要だろうということになり、末の子供が娘であったという小説の1行をベースに、オリジナルキャラクターのヘラを生み出しました。女性が王位を継ぐことがない世界ですし、ヘラはローハンの歌には歌われていませんが、「こんな人がいたんだよ」という語られないヒーローとしてすごく映画的だと思い、単純な王女の話にはならないように物語を膨らましていきました。
黒澤映画を感じる瞬間「少なからずある」
Q:プロデューサーのフィリッパ・ボウエンは、主人公のヘラを「スーパーヒーローのようなウォーリアープリンセスにはしたくなかった」と語っています。監督が思うヘラの魅力、彼女を描くにあたって意識したことはありますか? 当時の中つ国における女性は、別の国に行き、その国と同盟を結ぶために政略結婚する立場だったと考えられます。その設定の中で、彼女のキャラクター造形を作っていきました。「ローハンの楯の乙女」の運命を背負う彼女は、剣を握ってはいけないと言われているけど、実はこっそり剣術を教わっていたんだろうとか、乗馬も父親譲りで子供の頃から上手かったなど、活発で自由に生きてた女性だと思うので、ヘラは意外と現代的な女性なのではないかと捉えていました。
Q:制作統括の橋本トミサブロウさんは、本作が『ロード・オブ・ザ・リング』の物語でありながら、日本の大河ドラマのような展開になっているともお話されていました。