オックスフォードをご散策 両陛下がルーツを確認された旅の締めくくりに 天皇、皇后両陛下ご訪英同行記(6完)
国賓としての晩餐会など、格式の高い公式行事においても、どこか温かな、親密さに満ちた雰囲気が醸成されていたのは、「プリンス・ヒロ」として2年4カ月、英国で学ばれた陛下の「再訪」に対する英国の人々の好意的な感情があったからではないだろうか。
「本当にたくさんのお知り合いがいらっしゃった。そうした関係を、本当に大切にしておられたのだと思った」。訪問に同行した宮内庁幹部は、こんな感想をもらした。
■ご留学経験と天皇の国際親善
今回の旅は、陛下が天皇としてのお立場で、皇后さまとともにご自身のルーツを再確認される旅となった。戦後の厳しい時代に訪英した昭和天皇、上皇さまの足跡をたどり、さらにグローバル化した現代社会の中で、ご自身は国際親善にどのように向き合っていくかを確かめられた。
「オックスフォードで日常的に見られるような、国を越えた人と人とのつながりが、やがて世界中の国々や人々との前向きな関係を紡ぎ出すものに発展していけば」
陛下は28日、オックスフォードの関係者との昼食会で、こんな言葉を述べられた。ご留学中の経験が、陛下の国際親善における考え方の根底にあるということを、この取材で確信した。
また、陛下が同じ英国留学を体験された皇后さまとともに、ご自身のルーツに立ち返られたことは、お二方の絆をいっそう、強固なものにしたのではないだろうか。
羽田に向かう政府専用機の機中で、少しずつ遠くなっていく英国の深い緑の街並みを眺めながら、両陛下のご訪英の意義と、この同行取材の成果に思いを巡らせた。(ロンドン 緒方優子)