「何が本当なのか」…疑問を投げかける韓国のAI映画 [韓国記者コラム]
【06月20日 KOREA WAVE】人工知能(AI)を扱った韓国映画「ワンダーランド」が公開された。愛する人が世を去った後、残された人たちが良い思い出を残せるように、亡き人のデータを集めてAIで復元する技術が扱われている。まるで生きている人とビデオ通話をしているようだが、実際は仮想のAIに過ぎない。 今は30秒の音声情報さえあれば、多様な声を再現することができる。1996年にこの世を去った歌手キム・グァンソクが、BTSの歌をうたうことも可能な時代だ。仮想人間がテレビ広告を撮影する時代だ。「ワンダーランド」の中の技術が現実になるのは時間の問題だ。 ワンダーランドの技術は、愛する人を亡くした人が悲しみを乗り越えるのに役立つ。映画の中のスジは、植物人間になった交際相手のパク・ポゴムをAIで蘇らせ、毎日のように映像通話をして日常をともにする。過去の記憶を思い出しながらだ。人間は思い出を忘れるものだが、AIのパク・ポゴムは一つも忘れない。 皮肉なことに、この幸せは、パク・ポゴムが植物人間の状態から目覚めたことにより、亀裂が生じた。スジは本物のパク・ポゴムを受け入れることができない。いつも優しい言葉をかけてくれて、素敵な夢を叶えてくれるAIパク・ポゴムがいるのに、人間の姿にはなぜか失望してしまう。 結局、映画は「何が本物なのか」という問いを投げかける。時には失敗したり不器用だったりする人間より、完璧な姿で疲れを知らないAIが「本物」になるのかも知れない。技術が高度化されれば、むしろAIより人間の方が感情を扱うのがもっと苦手になるかもしれない。 今、AI企業は人のように思考できる技術を作ることに集中している。最近、グーグルとマイクロソフトは、人と相互作用するマルチモーダル技術を発表し、世間を驚かせた。オープンAIはすでにさらに高度化した技術があるが、さまざまな副作用を懸念し、外部に公開していない。すでに人間のようなAIはほとんど完成している。 人のようなAIが人よりさらに「本物」になる世の中が来るかもしれない。世の中に完璧な人間はいないと言われるが、AIは完璧な人間だからだ。怒ることもなく、相手との情緒的な交感能力も優れている。地道で誠実だ。そうなれば、わざわざ人間が他人と関係を結ぶために努力する必要があるだろうかと思う。 AIは人間の世界に多くの質問を投げかけている。米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)とOpenAIのサム・アルトマンCEOの紛争、さらにはオープンAI内部の紛争もAI技術を見る視点の違いから発生した。私たちが作ってきた「本物の人間」の社会的基準を改めて考えてみることだ。【news1 ソン・オムジ記者】 (c)KOREA WAVE/AFPBB News
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