五輪銀メダリストで元総合格闘家の永田が11年ぶり復帰の全日本で最年長V
代々木第二体育館で開催されている天皇杯全日本レスリング選手権の2日目に、最年長優勝記録が20年ぶりに更新された。43歳で優勝したのは、シドニー五輪銀メダリストで、その後、総合格闘家にも転身した永田克彦。それまでは38歳が最年長記録だった。試合内容をみると、11年ぶりの復帰マットでの優勝は、幸運の積み重ねでも、番狂わせでもなかった。脇への差しが力強く的確で、守りの堅い、かつてのオリンピックメダリストとなった当時の永田の姿が、そのままマット上に存在していた。今もトレーニングを欠かさず180キロの負荷をかけたスクワットも消化。体のコンディションも20歳そこそこの選手たちにひけをとらなかった。 ただ昔は、いつも前のめり気味に言葉を発していたが、40歳を超え、少し余裕をもった間合いで話すようになった。「学生や子どもたちに自分の姿で見本を見せられたことがうれしい」と、指導者の顔で優勝の感激を口にした。 今回の全日本選手権はリオ五輪代表選考会とされているものの、永田はその争いに関わりを持てない。というのも、出場したグレコローマン71kg級は2014年から実施されている新階級制度で誕生した、五輪でだけ実施されない非五輪階級だからだ。五輪を目指さない全日本選手権出場は彼のレスリング人生で初めてのことだ。以前だったら世界や五輪を目指さない試合出場は考えられなかった。考えを変えて、復帰する、きっかけとなったのは、転身した総合格闘家から再びレスリング界へ戻り、4月に日本ウェルネススポーツ大学のレスリング部監督を引き受けてからだ。 「創部したばかりで部員が少ない小さなレスリング部ですが、チャンピオンを目指す気持ち、世界を目指す気持ちをもってほしいと思っています。こういうことは、教える僕が態度で示すことがもっともよい見本になりますから、自分が試合に出ることを考えていました。その場合、ベテランズ選手権ではなく世界トップクラスの戦いとつながる試合を最初から選ぶつもりでした」