突然の大量出血、1歳1カ月の娘を失った母の思い 10万人に1人の難病「クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群」を知ってほしい
血管腫からの大量出血で我が子が天国へ
いろはちゃんは四肢の左右差は見られなかったが、血管腫からの出血に注意が必要だった。 血管腫は成長に伴って増えていき、何の前触れもなく突然、出血する。慎重に見守っているのに、気づけば服や布団に血が染みていたことは何度もあった。 出血は少量であることがほとんどだったが、NICUに入院中だった生後1カ月の頃には大量出血を経験。タオルで体を拭く、自分で体を引っ掻くなどの些細な行動も血管腫からの出血に繋がるため、うにさんはできる限り摩擦を起こさないように気を付けて体に触れるなど、細心の注意を払った。 「出血した時は絆創膏で抑えたり、包帯を巻いたりして圧迫止血していました」 そうした配慮も、うにさんにとっては負担にならず。最愛の娘と過ごせる日々が、ただただ愛しかった。 だが、かけがえのない時間は突然、奪われてしまう。その日、たまたまワンオペ育児だったうにさんはいろはちゃんとの入浴を楽しみ、“いつもの日常”を終えようとしていた。 「娘が楽しそうに蛇口をひねっていたので、先に上がる準備をしながら遊びを見守っていました。遊び終わった後、娘をお風呂から出させて体をタオルで拭き、保湿の準備をするために、ほんの一瞬だけ目を離し、再び娘を見たら足からすごい速さで血が噴き出ていて…」 それは、生まれた時から太ももの上にあった大きな血管腫からの出血だった。 うにさんはすぐに119番をして圧迫止血をしたが、大量出血であったため、血は止まらず。いろはちゃんは救急搬送された病院で心肺蘇生も受けたが、1歳1カ月で生涯を終えた。 「太もも上の血管腫は、常々『ここから出血したら危険だね』と医師や家族と話していたものでした。いずれ、こうなった、それがこの時だったんだと思うことで気持ちを整理するしか、今はできません。他にできることはなかったのかと考えてしまう自分もいますし…」 最愛の娘を亡くしたうにさんは、心が空っぽな状態に。だが、いろはちゃんが亡くなったのと同時期、妊娠が発覚したことで、なんとか踏ん張ることができたという。 「娘からの贈り物みたいだと思いました。無事に生まれてほしいです」 なお、うにさんは“我が子の死”という耐えがたい現実に直面したからこそ、似た状況に置かれた親への支援が広まることも願っている。 「私は精神科へ行こうとは思えず、似た境遇の人と集まって話したいと思っていました。難しいかもしれませんが、病院側などでも子どもを失くした親同士が交流を持てるような場を設けてもらえたら、ありがたいです」