消費者物価は3カ月ぶり伸び拡大、エネルギー上昇-日銀想定に沿う推移
(ブルームバーグ): 11月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は前年比上昇率が3カ月ぶりに拡大した。政府の物価高対策の縮小に伴うエネルギー価格の上昇が主因。今回の結果で経済・物価情勢が日本銀行の見通しに沿って推移していることが改めて示された。
総務省の20日の発表によると、コアCPIは前年比2.7%上昇。市場予想は2.6%上昇だった。日銀目標の2%を上回るのは32カ月連続。電気・ガス代への政府補助金の縮小でエネルギーは6.0%上昇と前月から伸びが加速。生鮮食品を除く食料もコメ類を中心に4.2%上昇と伸びが拡大した。生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIは2.4%上昇と4カ月連続でプラス幅が拡大した。
日銀の植田和男総裁は19日、利上げの見送りを決めた金融政策決定会合後の会見で、足元の経済・物価はオントラック(想定通り)に推移しており、日銀の「見通しが実現していく確度は多少なりとも上がっている」との認識を示した。物価面で利上げの環境が整いつつある中、今後は利上げを見送った理由に挙げた米政治・経済の先行きや来年の春闘の賃上げ動向の見極めが鍵となる。
みずほ証券の片木亮介マーケットエコノミストは、「総裁は会見で国内の物価経済情勢はオントラックと言っていたが、そこの評価自体は全国CPIを受けても変わらない」と指摘。サービス価格などに見られる物価の基調もここにきて急に強まってはいない点も変わらないとし、利上げ時期に関しては「追加でのヒントは今回のCPIからはないかなというのが正直な印象」だと語った。
賃金動向を反映しやすいサービス価格は1.5%上昇と前月の伸びと同じだった。日銀が13日発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)によれば、人手の過不足感を表す雇用人員判断DIが1990年代のバブル崩壊以降で最も低い水準となっている。人材確保のため賃金に上昇圧力がかかりやすい状況が示唆される中、賃金から物価への転嫁が進展するかが注目される。