なんと、もったいない…! 多くの人が「カビだらけ」と捨ててしまっていた「ホントの鰹節」…じつは、その「カビ」がいいんです
基本調味料の「酢」「醤油」「味噌」はもちろん、「漬け物」「納豆」「鰹節」「清酒」さらには「旨味調味料」も……。微生物を巧みに使いこなし、豊かな発酵文化を築いた日本。室町時代にはすでに麴(こうじ)を造る「種麴屋」が存在し、職人技として発酵の技術は受け継がれてきた。 【画像】消化しにくい「大豆のタンパク質」をごっそり頂く「人類の凄すぎる知恵」とは じつは、科学の視点から現代の技術で解析を進めるにつれて、そのさまざまな製造工程がいかに理にかなったものであるか、次々に明らかになっている。発酵食品を生み出した人々の英知に改めて畏敬の念を覚えつつ、このような発酵食品について科学的な側面から可能な限り簡明に解説していこう。 今回は、日本食で大活躍する「鰹節」を取り上げよう。「本枯節」と呼ばれる本格的な鰹節も、発酵の力で作られていたのだ。 *本記事は、『日本の伝統 発酵の科学 微生物が生み出す「旨さ」の秘密』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。
2種類の鰹節。じつは、ひとつは「未完成形」
鰹節は鰹の肉を加熱して乾燥させた日本特有の魚の乾物であり、世界で最も堅い食品のひとつとされる。鰹漁は初夏を過ぎる頃から始まるが、この時期は多雨で素干しには不向きなため、乾燥を早めるために煮干しが考案されたと考えられる。 やがて、干した鰹にカビを付けることにより風味を増す手法が考案され、江戸時代には鰹が水揚げされる土佐、薩摩、阿波、紀伊、伊豆など太平洋岸各地で鰹節が競って造られていた。 鰹を解体し、三枚に下ろして形を整える。大きなものは片身を背と腹に身割りして、雄節(背側)と雌節(腹側)にする。煮立たせないように70~95℃に保って鰹の身を1時間ほど煮る。放冷して脂肪や骨を除き、この時点で約70%の水分を含む鰹の身を樫や楢(なら)の木の薪(まき)を用いて燻蒸する。 1日に1回1時間ほど燻蒸して自然冷却し、1週間ほど繰り返して乾燥させたものが「荒節」であり、荒節を削ったものが「花かつお」である。約30%の水分を含む荒節は一見して鰹節らしく見えるが、完成形ではなく、発酵食品とは言えない。