業務の自動化が進むAI時代に人は創造的な仕事へシフトしていけるのか
人が創造的な仕事をするにはどうすればよいか さて、こうした調査結果や予測を踏まえて考えなければいけないのは、AIによって業務の自動化が進めば、人がやる仕事にどのような影響が出るかだ。業務の自動化が進めば、当然ながら今までその業務に携わっていた人の仕事はなくなり、その人はいらなくなる。だが、人手不足が深刻になりつつある中にあっては、AIによる自動化が人手不足への格好の対策となるだろう。 ところが、仕事の中身を踏まえると、自動化と人手不足のバランスが釣り合うとは考えにくい。とりわけ、ホワイトカラーでは自動化によって仕事を奪われる人が相当数出現するのではないか。その動きを想定して、人はもっと創造的な仕事へシフトしていけばよいという論調が主流になりつつある気がするが、本当に誰もが創造的な仕事へシフトしていけるのか。現実はそんなに甘くないのではないか。これが、筆者の懸念である。 そうした仕事のシフトを促進しようと、多くの企業が今、盛んに取り組んでいるのがリスキリングだ。このリスキリングで多いのが、AIをはじめとした最新のデジタル技術を新たなスキルとして身に付けようという動きだ。生成AIやノーコード開発ツールを利用することで、この動きは相当活発化している。とはいえ、にわか仕込みのスキルですぐさま創造的な仕事ができるようになるかというと、現実はそんなに甘くない。これが、さまざまなところで取材してきた筆者の肌感覚である。 取材の中では、「これまでデジタル技術に縁遠かったベテランをリスキリングで再生しようとしても難しい。会社全体をデジタルトランスフォーメーション(DX)するには、社員の『新陳代謝』を進めるのが一番効果的だ」といった中堅および若手の本音もたびたび耳にした。筆者も年齢的にはベテランの域なので、「新陳代謝は必要」と思いながらも複雑な気分になった。 そこで、この機会に提案したい。経営視点の組織論ではあるが、「デジタル技術の扱いを得意とする若手と、ビジネスおよびマネジメントで実績と経験を積んできたベテランや中堅を人事の観点でうまく混合させて、創造的な仕事を生み出し推進していくことを目的としたチームづくり」にもっと注力してはどうか。 もちろん、全社員がデジタル技術になじむ必要はある。だが、チームとして相乗効果を生み出していくのならば、例えば、ベテランや中堅が「この仕事ならデジタルでもっとこういう風にできるのでは」と投げかければ、若手が「それがデジタルで本当に具現化できるのかどうかを検証する」と応じるようなやりとりが、日常的に活発に行われるようになるのが理想的だ。このやりとりはもちろん、若手が起点になるケースもありだ。 その際、生成AIはチームの一員であり、個々人の相棒(副操縦士でもいい)でもあるという位置付けだ。 こうした取り組みを意識して始めている企業もあちこちで見かけるようになったが、AI時代のマネジメントの在り方としてもっと多くの企業に勧めたい。なぜならば「AIは人を生かすツール」なのだから。