『FF7 リバース』ティファとのゴンドラデートの1シーンは、クラウドに成長していってほしいという想いから。浜口ディレクターが開発秘話や三作目への意気込みを語る【PSパートナーアワード 2024 ジャパン アジア受賞インタビュー】
ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は2024年12月3日(火)、“PlayStation Partner Awards 2024 Japan Asia”の表彰式を開催。 【記事の画像(4枚)を見る】 会場では、2023年10月から2024年9月までの期間中に発売され、全世界売上の上位3タイトルに贈られる“GRAND AWARD(グランドアワード)”を受賞した『ファイナルファンタジーVII リバース』の浜口直樹ディレクターへ囲み取材が行われたので、その模様をお届けする。 ※インタビューではゲーム内容に言及している箇所があります。 浜口直樹氏(はまぐちなおき): スクウェア・エニックス 『ファイナルファンタジーVII リバース』ディレクター チーム全体が『FF7』にリスペクトを持って開発に取り組んでいる ――まずは、“GRAND AWARD”および“USERS’ CHOICE AWARD”(※)の受賞について一言お願いします。 ※日本・アジア地域で2023年10月から2024年9月までの期間中に発売され、同期間の総ゲームプレイ時間が多かった上位30タイトルの中から、日本・アジア地域ユーザーの投票によって選ばれた上位5タイトルに贈られる賞。 浜口: まずは、“GRAND AWARD”と“USERS’ CHOICE AWARD”の受賞、たいへんうれしく思います。いまは年末に差し掛かり、各国、各地域でさまざまアワードが開催されていますが、今日の“PlayStation Partner Awards”の“GRAND AWARD”に関しては、ほかのアワードとは違い、世界での売上での評価というところで、ユーザーの好みというところではなく、ビジネスでの観点で評価いただけたことに、私自身、非常にうれしく、とても光栄に感じています。そして、このタイトルをいっしょに作ってきたチームにも感謝しております。 ――『FF7 リメイク』から続く二作目となるタイトルですが、前作のノウハウから本作の制作に活かされたポイントがあれば教えてください。 浜口: 『ファイナルファンタジー』のフランチャイズでは、1本作ってつぎのナンバリングタイトルを作るとなった際に、比較的にチーム構成が大きく変わることが多いのですが、『FF7』リメイクプロジェクトに関しては、開発チームの母体がそのまま『リメイク』から『リバース』を作るという形で流れています。そういう意味では、一作目を作ったノウハウはそのまま引き継がれ、さらにそこから大きなチャレンジができたというところは、作品のクオリティーにつながったのかなと考えています。 ――前作をプレイしたユーザーからのフィードバックを受け、本作で反映した部分がありましたら、具体的にお教えください。 浜口: 一作目はミッドガル脱出という非常に早い展開のストーリーラインがあり、そこに対して、ユーザーに自由度を持たせる、選択を持たせるようなゲーム体験よりも、ストーリードリブンでジェットコースターのように進んでいくゲーム体験が合うだろうということで、一作目をゲームデザインしました。 ただ、ストーリー体験は重要だけれど、ゲームの中でどう自分らしく世界観に触れ合えるか、という点もいまの時代では求められるとも思います。そこは、私自身も作りながら感じていたことですし、『リメイク』を出した後に、ミッドガルを自由に探検したかったというところはありました。 ですので、二作目においては、ワールドマップに出て、非常に広大な世界を冒険できるようになるので、そこの中でユーザーの観点で自由に探検してもらい、自分なりに攻略してもらうというのを実現したかったということが、二作目を作る際に非常に強く思ったところです。 ――本作の制作においては、三部作の二作目ならではの難しさやプレッシャーがあったかと思いますが、どう乗り越えられたのでしょうか。: 浜口: プレッシャーはないわけでないですが、私自身、子どものころにオリジナル版をいちユーザーとしてプレイしていましたので、それをいま自分が手掛ける立場になったということもあり、自分としては楽しくワクワクしながらやっているというところが本音です。 開発チームも私と近い年代が多くて、子どものころにプレイして、影響を受けてクリエイターになったという人が、日本人だけでなく海外のスタッフにも存在します。チーム全体が『FF7』にリスペクトを持っていますので、そういった意味でも、プレッシャーよりも、楽しんで開発しているというのが正直なところですね。 ――本作では、広大なフィールドが用意されていたりなど、一作目と異なる部分も多いと思いますが、最もチャレンジングだった部分とそれに対する手応え、ユーザーの反応についてお教えください。 浜口: 先ほど少しお話させていただきましたが、本作はストーリーを重視することはもちろん、ワールドマップに対して、広大さやスケール感、ユーザー自身がどう探索して体験できるかという点は、『FF7』の二作目において、とても重要なことだと考えていました。 ですので、そこに対してのチャレンジというのは、すごくプライオリティを高く開発してきました。開発当初の試作段階の際には、ワールドマップの広さをしっかりと定義して、そこにどれくらいのコンテンツ量を置くかをあらかじめ決める作業を、すごく時間をかけてやりました。 近年では、特定の区画で区切ってこの広い空間を自由に探索できる、というようなオープンフィールドなゲームが多数ありますが、本作は原作ありきのものですので、全世界を冒険しながら探索していくということを実現する必要がありました。 とはいえ、実際の世界スケールの広さをゲームで実現することはなかなか難しいです。ですが、いろんな大陸を渡っているなということを感じる広さを構築するために、実際に開発できるギリギリのラインを定義するというのは非常にチャレンジングでしたし、楽しい業務でもあったなと感じています。 結果として、ワールドマップを自由度を持って探索できて、そこに対してコンテンツやミニゲームなどいろんなものがあったという点が、多くのユーザーやメディアからよい評価を受け、手応えを感じましたので、その点を次回作にも活かせるようにしたいなと感じています。 ――ユーザーからの反響が大きかった点をお聞かせください。: 浜口: 私はゲームを作る際、開発チームにわかりやすいコンセプトを提案してゲームをディレクションします。本作では“絆”をコンセプトに掲げました。ですので、バトルシステムにおいては連携技が組み込まれていたり、サイドコンテンツ、クエストなどであれば、クラウドと仲間たちの関係性を表現して、それらがデートイベントにつながったり。コンセプトに基づいてゲーム全体をデザインすることを私は重要視して作るのですが、それがユーザーに届いて反響がよかったという点はすごく手応えとして感じましたので、やってよかったと言いますか、記憶に残っている点ではありますね。 ――伝説的なタイトルである『FF7』を再構築する上でもっとも重要視した点をお聞かせください。 浜口: リメイクの作品ですが、分作のプロジェクトですので、原作とまったく同じものをただ作り直すだけだと、どうしてもユーザーの興味、好奇心が薄れてしまうので、そこに対して何かエッセンスを加える必要があるというのは、プロジェクトが立ち上がった時には決まっていましたし、絶対にやらなければいけないと考えていました。 ただ、それがパロディというか、これまでの『FF7』とまったく違うものになってしまわないようにすごく気を付けました。原作の要素をリスペクトしつつ、当時のハードでは表現できなかったものも現在のハードではよりディテールを表現できますので、懐かしくも新しい魅力を届けることを重要視して、一作目と二作目を作りました。 ですので、三作目も同じ心意気で作る必要があると考えていますし、最終作という位置づけですので、どういった結末になるかも含めて、多くの方の期待に応えられる作品に仕上げたいという想いで開発を進めております。 ――本作では、作中のゴンドラデートにおいて、ティファと好感度をマックスにすることで、クラウドとのキスシーンが描かれました。これは初代『FF7』発売から約27年間ではじめてのことであり、ファンに大きな衝撃を与えました。どのような意図でこのキスシーンを実装したのかお聞かせください。 浜口: これには、明確な意図があります。一作目でも、最後の新羅ビルに向かう際の分岐のイベントシーンでクラウドがティファを抱きしめるシーンがありました。それを踏まえて、『リメイク』から『リバース』につながった際に、クラウドにも成長していってほしいという思いがあり、二作目ではそれ以上を求めたほうがよいのではないかということがチームの中でも話に挙がり、あのような表現になりました。 ――『リバース』発売後のユーザーの反響を受けて、三作目の開発において元の構想から変えた部分はありますか? 浜口: 大きく変えたところはないです。『リバース』に関しては、私自身がイメージしたゲームの設計、デザインのバランスといったところはユーザーに自信を持ってお届けしましたし、それをしっかりと受け取っていただいたと判断しています。ですので、『リバース』を受けて三作目でゲームの設計やデザインで大きく変更した点はありません。 ただ1点、『リバース』でものすごく反省して、三作目で直さなければいけないと思ったものがあります。『リバース』はゲームのコンテンツ量が多くて、それをすべてのユーザーが全コンテンツをプレイするという割合が非常に少なかったんです。それ自体は間違っていなかったと思うのですが、そことトロフィーをつなげてしまったので、トロフィーの入手率が2%とかに留まっていて、そこはやりすぎたなと反省しています。ですので、三作目ではもっと優しいプラチナトロフィーにしようかなと考えています(笑)。 ――最後にユーザーの皆様へメッセージをお願いします。 浜口: 『FF7 リバース』は2月に発売してから約10ヵ月が経とうとしていますが、発売後、日本はもちろん、アジア圏や中東含め、さまざまな地域に足を運び、メディア、ファンコミュニティと触れ合ってきました。そこで、20年以上前に日本から発信された『FF7』というIPが、本当に多くの国や人々に愛されるIPになっているということをすごく実感しました。 現在三作目を開発していますが、多くの人の心に届くタイトルに仕上げて、三部作のフィナーレにしたいと思っておりますので、ぜひ期待してまっていただければと思います。