末期がんのピアニスト、宣告余命超え希望の「第九」コンサート開催へ…あと4日「絶対に見届ける」
第九の合唱は年末の風物詩。一方、コンサートは準備に時間がかかり、その年の年末だと開催が間に合わない。竿下さんは生き抜くと決意し、開催日を今年の年末に決めた。
第九の合唱はドイツ語で、子どもたちにはハードルが高い。それでも「音楽の喜びを受け継いでいってほしい」との気持ちから、近隣の小中学校に呼びかけた。36人が集まり、今夏から月2~3回、幼稚園などで練習を続けた。
竿下さんは、抗がん剤治療で2度入院したものの、体調は安定している。この夏以降、主治医から「がんが小さくなった」と言われたという。
治療は意識せず、「一日一日を楽しく過ごしたい」と音楽のことばかり考えて過ごしている。「心がぽかぽかすることをしているのが、がんに良い影響を与えたのかな」と笑顔を見せる。「まだまだ生きる」と前を向き、来年の手帳にも、次の第九コンサートの日程を書き込んだ。
同協会の理事、堀山理恵さん(52)は竿下さんから病気のことを聞き、悲しく、協会の活動に不安を感じたという。だが、「竿下さんは未来を見ていた。病気のせいで『できない』ではなく、『どうしたらできるか』を考える姿に、法人のみんなが力をもらっている」と話す。
コンサートは800席。当日の演奏はオーケストラで、竿下さんは全体を見渡し、進行する「ステージマネジャー」を務める。「突然の病気やけがで当たり前だった日常は変わる。今、目の前にある幸せを感じられる豊かな年末をみんなで過ごしたい」