【獣医師記者コラム】有馬記念、ことしの3歳と4歳以上の力量比較 アーバンシックやダノンデサイル、古馬と初対戦を軽く扱う材料にはしてはいけない
◇獣医師記者・若原隆宏の「競馬は科学だ」 有馬記念を検討するにあたって、例年3歳と4歳以上の力量比較は大きなテーマだ。特に今年の3歳は古馬との対戦歴がレガレイラによるエリザベス女王杯(5着)の1戦のみ。実際に出走してくる3歳馬の古馬との力量比較の参考になる戦歴が極めて少ない。 個別具体的な地力の比較検討はひとまず脇において、「今年の3歳のオープンレベルにおける平均」は、他世代に比べてどうだったのだろうか。 2年前にも同様の検討を行ったが、今年も統計を使ってレベルを計ってみる。今回も年度ごとの年齢別入着率のデータから、3歳の実績同士を年度別に検討してみた。 2022~24年の3カ年について芝1800メートル以上3歳古馬混合戦のうち、ハンデ戦を除くオープン競走の入着率をまとめたのがグラフだ。有馬記念検討のための調査を想定しているので、それぞれ混合戦開始から有馬記念前夜までを統計対象とした。 一見して今年の3歳は22年の3歳(現5歳)より優秀な入着率を記録している。3歳馬同士の着順を生データ(取り消し、除外、中止はデータから除外)とし、年度ごとの3歳の入着実績に差があるかを計算してみると(スチューデントのt検定。有意水準5%)、22年と24年の比較において統計的に意味のある差(有意差)が認められた(p=0・015、グラフの☆)。22年と23年の比較も見た目には差が大きいがp=0・056でわずかに有意水準に届かなかった。 もちろん、どの世代にも飛び抜けて強い馬(統計的には「外れ値」として扱うべき馬)はいるし、現5歳世代についてはイクイノックスやドウデュースが該当するだろうから、この統計から、ただちに例えば「アーバンシックやダノンデサイルはドウデュースより強い」みたいなことは言えない。ただ、現3歳は3歳戦の段階で「ドウデュースらの世代より、相手がおしなべて骨っぽかった」ということは言える。すなわちこの統計は、3歳世代の地力レベルのベースが高いことを保証してくれる。 今年の3歳戦でトップレベルの成績を残してきたアーバンシックやダノンデサイルはこれが古馬とは初対戦となるが、その点を軽く扱う材料にはしてはいけないと考えられる。
中日スポーツ