【球界再編20年・どうなるプロ野球】大谷フィーバーの陰で“地盤沈下”…地上波から巨人戦も消え、ファン層は高齢化
■ ファンも選手も、メジャーに関心…打開策は? 野球日本代表「侍ジャパン」ではメジャー組の参加の可否が盛り上がりを大きく左右し、国内選手の影は薄い。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でも大谷選手やダルビッシュ有投手らメジャー組が注目を集め、山本由伸投手や松井裕樹投手が大会翌シーズンからメジャーへと移籍した。 市場規模ではメジャーと日本のプロ野球は1995年当時はそれほど変わらなかったが、現状では放映権料収入などの差が大きく、7、8倍の開きがあるといわれる。選手の平均年俸も今年の日本のプロ野球が4713万円(日本プロ野球選手会調べ)に対し、メジャーは今季の開幕時で498万ドル(約7億6000万円、マイナーの選手を除く)の差がある。 野球の未来については、メジャーも危機感を抱く。調査会社「Magna Global」が17年に発表した全米のスポーツ種目別のテレビ視聴者の平均年齢は57歳まで上昇し、4大プロスポーツでも最も高い。メジャーも試合時間の長さを懸念し、投球間隔に制限時間を設ける「ピッチクロック」を導入するなど対策を急ぐ。 日本のプロ野球では、12球団が一体となったビジネス戦略になかなか足並みがそろわない。放映権料の一括管理を一つとっても簡単ではない。地元密着路線の浸透で全国中継の巨人戦が地上波から激減し、各球団はそれぞれの地元局とのつながりを深めているからだ。 選手の意識も急激に変化した。フリーエージェント(FA)制度の導入時には、実力のある選手が巨人に集中すると言われ、実際にライバル球団などの4番をこぞって補強した時代もあるが、近年のFA選手は巨人に偏ることはなく、トップ選手になるほどメジャーを見据える。 少子高齢化や社会構造の変化も著しくなる「次の20年」にプロ野球はどんな手立てを打てるのか。打開策は急務といえる。 田中 充(たなか・みつる) 尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授 1978年京都府生まれ。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程を修了。産経新聞社を経て現職。専門はスポーツメディア論。プロ野球や米大リーグ、フィギュアスケートなどを取材し、子どもたちのスポーツ環境に関する報道もライフワーク。著書に「羽生結弦の肖像」(山と渓谷社)、共著に「スポーツをしない子どもたち」(扶桑社新書)など。
田中 充