【球界再編20年・どうなるプロ野球】大谷フィーバーの陰で“地盤沈下”…地上波から巨人戦も消え、ファン層は高齢化
■ 頼みの綱の巨人戦が地上波から激減 これに対し、当時の阪神球団社長だった野崎勝義氏は、日本シリーズやオールスターが継続できなくなることや「パイの縮小」に危機感を抱いた。セの中日、ヤクルト、広島、横浜(現DeNA)と反対の歩調を合わせるための同意を得て、交流戦の実施などを盛り込んだ「試案」を示す。 しかし、巨人はこの動きに不信感を募らせ、パの球団からは巨人をパに呼び込もうとする動きもあった。 再編騒動はその後、当時の巨人軍オーナーだった渡辺恒雄氏(現・読売新聞グループ本社代表取締役主筆)の「たかが選手が」発言、明大投手への現金を渡す「栄養費問題」の発覚によって渡辺氏がオーナーを辞任(後に阪神と横浜のオーナーも辞任)、さらには選手会による史上初のストライキが行われ、最終的には新規参入で楽天を迎え入れて、セ・パ各6球団による2リーグ制が維持された。 2005年シーズンからは、セ・パによる交流戦が実施され、パの球団も「巨人戦の果実」を手にしたかにみえたが、その後のプロ野球をみてみると、状況は一変している。 巨人戦の中継そのものが視聴率低迷などで地上波から激減。日本テレビの公式ホームページではコロナ過で公式戦が120試合になった20年、巨人主催の60試合のうち、地上波中継が20試合で、うち全国ネットはナイター7試合を含む8試合にとどまる。近年の日テレの地上波中継にも大きな変化はない。 視聴者が多い19~22時の「ゴールデンタイム」と重なるナイター中継では、日テレにとっても、巨人戦は20%超を稼ぐキラーコンテンツだったが、近年の巨人戦は10%でも合格点といわれる。これでは他局との視聴率争いで勝負できず、中継数を減らすことはやむを得ない。 CS日テレジータスやインターネット配信で全試合を配信し、コアなファンはこちらへ流れる構図だ。
■ 地域密着に活路見いだすもファンは高齢化 プロ野球チームが軸足を移したのが、本拠地のファンを大切にする「地域密着」路線である。 2009年誕生の広島のマツダスタジアム、23年にオープンした日本ハムの「エスコンフィールド北海道」は、メジャーを模倣したスタジアムのボールパーク化を実現。ファンに球場へ足を運んでもらって、スタジアムのにぎわい創出で稼ぐビジネス展開へと舵が切られた。 実際、プロ野球の平均観客動員数は右肩上がりで伸び、コロナ直前の2019年が史上最多の3万928人(セは3万4655人、パは2万7202人)。コロナ禍が落ち着き、再び動員数を伸ばしている。 12球団の2023年度の決算では、球団単体での開示を行っていない巨人、中日と当期利益を非公表にしているオリックスを除く9球団のうち、ソフトバンクと楽天以外の7球団が黒字だった。中日も今年1月の年賀式で球団社長が4年ぶりの黒字見込みだと明かしている。 一方で、ファン層は高齢化が進み、2022年2月2日配信の「LINEリサーチ」のプロ野球に関する調査によれば、10~30代の5割超がプロ野球を観戦しないと回答し、テレビ観戦者の約半数は50代だった。 野球ファンの注目は、日本のトップ選手が移籍したメジャーリーグへと向く。 足元では少年野球をはじめとした競技人口が少子化を上回るペースで減少し、スポーツ庁の推計によれば、高校球児は2038年度には、ピークの14年度の17万人強から半減するという。