「エンゲル係数」上昇中 コメもキャベツも高く家計に打撃 賃上げ定着への期待高まる
家計の消費支出に占める食費の比率を示す「エンゲル係数」の上昇傾向が顕著だ。総務省の10日の発表によると、2024年11月は28・8%。24年通年では42年ぶりの高水準を記録する可能性も出てきた。主食のコメを始めさまざまな食品の価格が高騰しており、家計に負担をかけている。低所得世帯ほど厳しく、日本人の生活の質や購買力の低下が懸念される。 11月の消費者物価指数(総合)は前年同月から2・9%上昇。このうちコメやキャベツの価格は前年同月の1・6倍を超えた。天候要因のほか、人件費や輸送費の上昇が価格を押し上げている。 チョコレートやコーヒー豆など原材料の多くを海外に頼る品目では、円安による輸入コスト上昇の影響も大きい。 生きる上で欠かせない食料への支出割合が高いほど家計にゆとりがない状況といえ、エンゲル係数は暮らしの豊かさや逼迫の度合いを把握するのに役立つ。 長期的なトレンドをみても、エンゲル係数の上昇傾向は顕著だ。24年平均のエンゲル係数は11月までの暫定値で28・2%。1982年以来、42年ぶりの高水準となる勢いだ。 25年に入っても、こうした傾向が収まる兆しはみえない。帝国データバンクによると、25年は1~4月の4カ月間だけで6121品目の食品の値上げが判明している。平均の値上げ率は18%となり、24年の平均を上回る見通しだ。 第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「食料は政府による支援の手が届きにくい分野だ。円安でもうけている企業から賃上げを進めていくしかない」と指摘する。 24年春闘の平均賃上げ率は、大手企業で5・58%(経団連集計)と33年ぶりに5%を超えた。25年春闘に向けても、大企業からはすでに前向きな声が出始めている。 熊野氏は「25年春闘でも5%の賃上げに成功すれば、26年以降の賃上げの定着が期待でき、食費による家計負担の軽減につながるだろう」と話している。(米沢文)