「視聴者を舐めるんじゃないよ」と常に言ってきた--ワイドショーを「変えた」小倉智昭が語る、キャスターの矜恃とこれから
キャスター生活に幕を下ろすつもりはない
小倉は高視聴率を記録すれば、スタッフに金一封を出し、忘年会に安全地帯など大物アーティストを招いて士気を高めた。その制作陣の大半は後継番組『めざまし8』に残留した。自分だけが外されたという心境を抱かなかったか。 「いやいや、それはないですね。『一緒に辞めたいです』と言ってくれた連中もいるし、本当に去った人もいます。ただ、フジテレビや制作会社の社員は、会社の意向で番組を作っている。自分の意志で好きに動けるわけじゃないですから」 局に番組タイトルを継続したいと相談されたが、小倉は拒否した。 「22年も続けると、僕自身も視聴者も『とくダネ!』イコール小倉智昭という意識が強い。辞めるならタイトルもなくしてほしい気持ちがありました。後を引き受ける谷原章介君や永島優美さんも、同じままだとやりにくいでしょう」 『とくダネ!』に人生を懸けた男の意地、後継者への配慮が絡み合っていた。最終回、小倉は2分26秒にわたるラストメッセージのうち、半分以上を『めざまし8』へのエールに費やした。22年間の思い出を語ろうとはしなかった。 「たしかに、普通は自分のことを話しますよね。でも、スタッフはそのまま残るし、みんな苦労して番組を作ってますから。あの時間帯のことを考えたら、筋かなと」 エンドロールには22年間のレギュラーなど290人が列挙され、ショーン・マクアードル川上ら突如として番組を去らざるを得なくなった名前も記載されていた。 「出たんだってね。平等でよかったと思う。出演していた事実があるのに、消したら変ですしね。ショーンKは(学歴詐称の)騒動が起こった時、電話がありました。気まずそうでしたね。番組でも触れましたけど、ああいう時って、本当に困っちゃうんだよなあ」
『とくダネ!』が終わったからといって、キャスター生活に幕を下ろすつもりはない。 「世の中は引退すると思ってるみたいですけど、そんな気はさらさらないです。体が動く間はまだまだしゃべりたい。(自分の経営する)中野の焼き肉店やハワイのラーメン屋をつぶすわけにもいかないし、もっと数を増やしたいという野望もありますよ」 一時代を築いた舌鋒鋭い久米宏、みのもんた、古舘伊知郎に続き、小倉もキャスターを降りた。現在の報道、情報番組を見渡せば、芸人がMCを務めたり、癖のない局アナが淡々とニュースを読み上げたりしている。現状をどう感じるかと聞くと、ポツリとつぶやいた。 「今のテレビでは、あまり我の強い司会者は好まれなくなってるのかな。当たり障りのない人のほうがいいんでしょうかね」 時代は変わったのかもしれない。だが、世の趨勢にあらがう74歳がいてもいい――。