「視聴者を舐めるんじゃないよ」と常に言ってきた--ワイドショーを「変えた」小倉智昭が語る、キャスターの矜恃とこれから
「視聴者を舐めるんじゃないよ」と常に言ってきた
2011年、日本テレビの『スッキリ!!』に抜かれる日も珍しくなくなり、フジテレビ全体の視聴率も落ち始めていた。翌年秋には、番組開始以来続いてきた名物コーナーも終了する。 「ロンドンでオリンピックの取材をしている時、プロデューサーがわざわざ来て、『オープニングトークをやめてください』と。僕は、基本的にスタッフの意向に沿うと決めてますから、嫌とは言わなかったですね」 『とくダネ!』は2014年から3年連続で民放同時間帯の年間視聴率1位に返り咲くも、2017年以降は『羽鳥慎一モーニングショー』にその座を明け渡す。この頃、番組に大幅な変更があった。以前の台本はコーナーの順番が載っているくらいだったが、小倉からコメンテーターへの質問まで書かれ、好調な裏番組と同じようにボードで話題の説明をし始めた。これが、『とくダネ!』の良さを失わせる結果となる。 「多種多様なコメンテーターを起用するようになって、中には無理じゃないかと思う人もいた。だから、質問事項をある程度決める必要があった。また、ボード通りに番組を進めたいから、スタジオの段取りもきちっと組む。僕は、全部消化しきれなくたっていいと思うんだけどね。それに、VTRで流したコメントを、もう一度ボードで読み上げるでしょ? 見ている人を、バカにしてんのかっていうさ。ディレクターは曜日ごとに決まっていて、週1回しか担当しない。毎日見ている主婦や高齢者のほうがよっぽど頭いいんだぞって。視聴者を舐めるんじゃないよって常に言ってきましたけどね」
かつて追随された『とくダネ!』が他局を模倣するようになり、小倉の持ち味は薄れていった。2018年11月から、膀胱がんによる膀胱全摘手術のため、番組を1カ月以上離れた。入院先で暇を持て余し、初めてエゴサーチをした。 「僕の名前で検索すると、いろんなことが出てくるんだと驚きましたね。それ以降、自分に関するネットニュースも見るようになりました。記事にしてくれるのは、ありがたいですよ。ただ、番組を見ないで、ごく一部の文言だけに噛みついてコメントする人たちがいる。しかも、匿名でしょ。おかしいと思いますね。それに、ネットに書き込まれた意見を、あたかも世論のように扱うことには違和感を持ちます。1つの意見が存在することは間違いないけど、どのぐらいの人がそう感じているかというバロメーターはないわけで。何も書かない人もたくさんいますからね」 2020年3月、小倉は降板を告げられた。 「『たしかに衰えてもいるし、数字も落ちてはいますよね。そういう話が出てもしょうがないとは思います』と答えました。ただ、急な話だったし、僕が返事できるものではない。局としては、まず本人の意思を確認したいという気持ちがあったんでしょうね。20年以上やっていましたから」 局長のあと、プロデューサーとも15分程話したが内容に変わりはなかった。そして、その数週間後、東京五輪の1年延期が決まった。 「事務所と局が話し合って、終了が昨年の秋から今年の春に半年延びました。オリンピックが開催されたら、情報番組でしゃべらせてもらうという話にもなりました。だから、今月また嫌がられながら出ていく(笑)。フジテレビとしては、『グッディ!』(2020年9月終了)の安藤優子さんと同じタイミングで降板という思いだったんでしょうね」