「スーツが義務の会社」が与える不要な威圧感...伝統的な日本企業の閉塞感の原因
自律しながら協力できる社会へ
コクヨは「自律協働社会」を掲げ、会社や社会全体の未来について考えているという。レポートによれば、自律協働社会とは既存の大きな社会的システムに依存するのではなく、一人ひとりが自由で自律的に自己表現をしながらも、孤立せずに他者と協力・協働できる社会を意味するそうだ。 「これからグローバル化やテクノロジーがますます発展していく中で、人はより自分らしい生き方を追求していくのではないかと考えました。しかし、それで皆が自分のことだけ追求する社会になるのだとしたら、破綻に向かうように思います。だから個人のやりたいことは認めつつ、興味が近い人たちが集まって、助け合ってシェアしていく社会になれば新しい幸せにつながるんじゃないかと。」(黒田さん) 「私も自律と協働は素敵なスローガンだと思っていて、この先の社会それがないと難しくなっていくと思います。文化比較の視点で言うと、日本はアメリカに比べて主体性が弱い。だからこそ日本においては協働を通して自律をどう生み出していくかが必要になってきますね。」(内田教授)
では、日本社会において自律を促すにはどうすればよいのか。コクヨは社員の自律のためにも"実験"を行っているという。 「自律には、社員一人ひとりがこの集団でどうなりたいのか考えることが必要だと思います。 その自律性を引き出すために、弊社では社内複業のルールを導入しました。6か月間、勤務時間の20%を社内の他の業務に使えるルールを人事部と一緒に考えました。これはキャリア拡大や経験の幅を広げるための制度で、例えば入社からずっと営業だった人が違う仕事もしてみたいといったときに、転職ではなく社内で実現できるように仕組みを整えました。 公募制になっていて、ある部門が今までと違う人の意見を求めたり、空気を変えたい場合に、20%分の仕事を出します。それに対してやりたい人が手を上げてマッチングするようになっています。」(黒田さん) この20%複業ルールは効果的で、個人の成長と会社の発展を両立させているという。また、最近ではこの事例を聞きつけ、同様の取り組みを導入する他社も増えているそうだ。 このコクヨの施策に対して内田教授は、社内に流動が生まれ、社員と会社の関係性をより良くするのではないかと賛同の意見を述べた。 「会社って、通常は停滞した場所になりがちだと思います。とくに日本は基本的に新卒でそのまま勤める人が多く、引越し回数も他の国に比べると少ない。流動性が低い傾向にあります。すると閉塞感が増して、この場所で評価一つ失ってはいけないという恐怖につながります。だから社内複業制度は、そうした閉鎖的状況からの解放にもなると思います。」(内田教授)