丸山和郁の打球が当たり、手当てのためベンチに戻る阪神のジェレミー・ビーズリー

【球界ここだけの話】 神宮球場のファンはガッツあふれる阪神の助っ人右腕に声をからした。 「ファイト、ファイト、ビーズリー！」 9月28日のヤクルト戦で先発したジェレミー・ビーズリー投手（28）が二回に丸山和のライナーを右足に受けた。倒れ込み、治療を受けたのち、志願の続投。だが、三回に打席がまわってきたところで代打が送られた。来日2年目。先発、中継ぎを問わず、2軍で調整を命じられても文句ひとついうことなく練習に励んできた。顔はちょっぴりコワモテだが、ナイスガイ。彼を悪くいう人は聞かない。 無念の2回降板となった前日は2軍施設の鳴尾浜で汗を流していた。 「（相手の）誰が塁に出て誰がかえすかは、はっきりしている。しっかり抑えていきたい。僕はチカモトを助けたい」 助っ人右腕が強調していたのはチームの勝利だけではなく、野手のタイトル争いのことだった。 最多安打は長岡（ヤクルト）と近本で激しい争いを繰り広げている。自分が相手を止めれば優位に立てる。その思いを胸にマウンドに立った。一回先頭の長岡に対し、変化球を駆使しながら一ゴロ。ところが、好事魔多し。二回に丸山和のライナーが直撃すると本来の投球ができなくなった。長岡の2打席目にヒットを許し、サンタナの一発につなげてしまう。負傷し、4失点してもファイティングポーズをとり続けたのはチームメートへの思いがあったからだ。 登板前まで今季4戦4勝だったヤクルト戦でも神宮は得意ではなかったようだ。「マウンドがね…。踏み出した足の位置が崩れてしまったり」。傾斜が小さく「掘れやすい」といわれる独特の形状。「マツダスタジアムよりは投げやすいんだけどね」とニヤリとしながら「地方球場で慣れているから」と話していた。 29日に出場選手登録を抹消されたため、今季のレギュラーシーズンでの登板は終了した。来日2年目は14試合に登板し、8勝3敗、防御率2・47。安藤投手コーチはビーズリーの今について「動けない状態」というが、クライマックスシリーズや日本シリーズで復帰する瞬間をナインの誰もが待ち望んでいるはずだ。ノイジー、ミエセスの野手コンビは来季の戦力構想から外れて、ノイジーはすでに帰国。2年契約が満了する岡田監督の去就が注目を浴びているが、ビーズリーが年俸80万ドル（約1億1760円）前後であれば誰が監督でも戦力に入れる。 報道陣がコメントを求めれば自ら靴底をすり減らし通訳さんを探してくれる。久々に文字通りの優良助っ人を見た気がする。来季もタテジマを着て、V奪回の力になってくれるはずだ。（阿部祐亮）