庵野秀明と安野モヨコ、日本一のオタ夫婦の日常とは―安野 モヨコ『還暦不行届』
還暦を迎えた鬼才監督・庵野秀明と、漫画家・安野モヨコ。 日本一のオタ夫婦(!)のおかしくも愛おしい日常を文章でつづった 安野モヨコのエッセイ『還暦不行届』が話題です。 新婚生活を描いた漫画『監督不行届』を上梓してから18年。 今回は文章で、その後の日々が赤裸々に、ディープに書きつづられます。 監督の数々の名言もさらにパワーアップ。そんな1冊から、特別に「おわりに」全文を公開。この文章エッセイに込めた想いとは? 最初に漫画の「監督不行届」を描いてから 早いもので15年以上経った。 思い起こすと当時は監督の行動全てが新鮮で いちいち驚き、毎回笑い転げていたものだったが 年月が経つにつれてそんな異常な生態の全てが 日常になってしまった。 頻度は減ったけどいまだに 「え?」となる事はけっこうあって そのたびに漫画にしようとは思うのだけど 漫画として成立させるにはそのちょっとしたボケやハプニングにプラスして、 監督ならではのこだわりやら思い込みなどを絡める必要がある。 でも監督の謎ルール、みたいなものを もう自分の生活に受け入れて暮らしているために 私自身の感覚とも同化していて 改めてすくいあげることが難しい。 なんつって 本文中でもいかにもしっかりもののような顔をして 監督の生活を支えているようなことばかり書いているけど よく考えてみれば自分もたいがいなものだ。 夫婦というのは似たもの同士、持ちつ持たれつなので 私も出来ないことやわかっていないことがたくさんあって どちらかと言うと私のほうこそ支えてもらってきたように思う。 漫画のネームが思いつかず、玄関や寝室、リビングなど ところ構わず転がってのたうちまわっている時も 酔っ払ってブラジャーを丸めたボールで 夜中にひとりでサッカーをして遊んでいた時も 運転免許を取って初めての高速道路で 怖くて途中で運転を替わって~!と絶叫した時も いつも変わらずにこにこしながら助けてくれてきた。 よく、20年も一緒にいられるねと言われるけど 身近な人たちは全員一致で そりゃー監督が優しくて我慢強いからだ、と思っているはずだ。 漫画家としても人間としても相当厄介なタイプなので 夫婦対抗偏屈合戦があったらおそらく勝者は私なんじゃないかと思っている。 今回も書籍化にあたり祥伝社の皆様には大変お世話になりました。 深く感謝いたします。ありがとうございました。 そして「監督不行届」からの読者の皆さま ならびに今回この本を手に取ってくださった読者の皆さま 続きが読みたい、との多くのお声がこの本のきっかけとなりました。 ありがとうございます。 漫画の分量は少なめですが楽しんでいただけたら幸いです。 監督、いつもネタにさせてくれて そしてそれを面白がってくれてありがとう。 これからもどうぞよろしくお願いします。 [書き手]安野モヨコ [書籍情報]『還暦不行届』 著者:安野 モヨコ / 出版社:祥伝社 / 発売日:2023年11月20日 / ISBN:4396617879
祥伝社
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