地震の傷を「金継ぎ」でつなぐ “火災で焼けた”珠洲焼を修復し伝える「記憶」 能登半島地震からまもなく半年【news23】
美術家 中村邦夫さん 「人も良いし、土も良いし、空気も環境も素晴らしい。工芸をやっている人にとっては、憧れの土地ですよ。特に漆に興味がある人にとって輪島は、一番憧れの場所だから。壊れてもやっぱり逃げる選択肢はないような気がします」 しかし、心配事もある。古民家がある輪島市地原地区には今も避難指示が出ている(6月27日時点)。土砂崩れがあった場所もそのままの状態だった。地原地区には14世帯が住んでいるが、大半は避難先から戻っていないという。 美術家 中村邦夫さん 「みんなに聞いたら家を壊すとか引っ越すって、みんな言ってて。僕しか残らなかったらどうしよう…」 ■朝市通りの店主から“焼けた珠洲焼”の修復依頼 その理由は… ボランティアを始めて半年が経つが、今も壊れた器の修復依頼は絶えない。男性が持ってきたのは… てんだ商店 田中宏明さん 「お店にあったんですけど。地震と火事で耐え抜いた珠洲焼で。後日、店から少し欠けてるやつを」 美術家 中村邦夫さん 「焦げてるのは…今回の火事で?」 火事で焼けた珠洲焼。田中宏明さん(33)の店は輪島市の朝市通りにあった。そこで伝統工芸品の珠洲焼などを売っていたが、元日に発生した朝市通り周辺の大規模火災で店を失った。 田中さんも震度7の地震で崩れてきた酒蔵の生き埋めになった。火事や津波のサイレンが鳴る中、1時間後に家族に助け出されたが、腰の骨を折るなどの大けがを負った。 てんだ商店 田中宏明さん 「価値観はガラリと変わりました。色んな人に感謝してるし、絶対にまた再建して、どんな形でも恩返ししたいと思うし」 田中さんが望むのは輪島朝市の1日も早い復興だが、建物の撤去・解体は6月5日から始まったばかり。完了時期の見通しは立っていない。輪島朝市で露店を営む人の平均年齢は70歳を超えているという。 てんだ商店 田中宏明さん 「おばちゃんらが『いらんけ?』って野菜とか売ってるから、この場所が成り立ってるんですね。待って1年なら、また店やろうか、というおばちゃんもいると思うが、これが4年、5年だったら、さすがにもう引退すると思うんですよね。またみんなでやりたい」