損保大手4社に20億円超の課徴金納付命令、価格カルテルや談合繰り返す…公取委
企業向けの保険契約で損害保険大手4社が価格カルテルや入札談合を繰り返したとして、公正取引委員会は31日、4社による独占禁止法違反(不当な取引制限)を認定し、計20億7164万円の課徴金納付命令を出した。再発防止を求める排除措置も命じた。4社の違反行為での売上高は、約540億円に上る。 【写真】公正取引委員会の審査局長から処分を言い渡される損保大手4社の社長ら(31日)
4社は東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険(いずれも東京)。一部で調整行為を仲介した保険代理会社「共立」(東京)にも排除措置命令を出した。
発表によると、4社は遅くとも2019年以降、災害時などの巨額補償を複数の損保で分け合う「共同保険」を巡り、取引先が4社へ支払う保険料の値下がりを防ぐことで合意。取引先が契約更新時に見積もり合わせを行う際、各社が取引先へ高額の保険料を提示するよう調整し、補償時の負担割合も事前に定めていた。
こうしたカルテルは、私鉄大手・東急(東京)、京成電鉄(千葉)、火力発電大手・JERA(東京)、電機大手・シャープ(大阪)、石油元売り・コスモ石油(東京)、仙台国際空港(宮城)と結んだ火災保険などで繰り返されていた。
また、東京都立病院の賠償責任保険や警視庁の自動車保険を巡る入札、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(東京)が発注する石油備蓄基地での事故などを補償する保険の入札でも受注する損保や落札金額をあらかじめ決めていた。
違反の背景には、自然災害が多発したことに伴い、保険金の支払いが増え、各社の収支が悪化したことなどがあるとみられる。利害が一致した営業担当者らが、電話やSNS、カラオケ店での会合などを通じて情報交換を重ねていた。
この問題を巡っては、金融庁も昨年12月、4社に業務改善を命じている。不適切な契約は計600の取引先と結ばれており、公取委は契約額や社会的影響力の大きな企業・団体との案件に絞って調査を続けていた。