〈中国「独身の日」はもうオワコン?〉消費低迷でダブルイレブンに終わった感、そして浮上する新たな社会問題
返品が続出
ダブルイレブンのシェアが全体の5割を超えるアリババ集団も、300億元(約6400億円)もの割引券を投入し、消費喚起を狙ったが、それもそれほど大きな効果を生まなかったようだ。むしろ、別の問題が浮上した。それは、一定の金額を購入すると、追加で割引がされる仕組みになっているため、いったん商品を購入したあと、すぐに返品するという消費者が続出したのだ。 そうしたやり方をするのは、アリババの割引券だけではない。商品に、ダブルイレブンに合わせた「特典」などおまけがついているものがあるが、その「特典」だけを入手し、肝心の商品を返品するという消費者が増えているのだ。 購入後、7日以内ならば返品可能というルールだからで、しかも返品の配送料は販売側の負担となる。企業によっては、返品率が6割7割、あるいはそれ以上ということもあり、社会問題化している。 上海に住む知人は「自分はそういうことはしないが、昔と違い、今では不良品が届く可能性は低くなっている。それなのに、特典だけもらって商品を返品するというのは、ルールを逆手に取った、一種の嫌がらせではないかとすら思う。アリペイやウィーチャットペイを使って支払うため、返品と返金の手続きは簡単になり、消費者の負担はないが、企業側は送料と手続きに莫大な負担を追う。結果的に、これは大きな問題にありつつある」と語る。
参加を避ける企業も出てくるか
中国には、双方の信頼が必要な「振り込み用紙」などは存在せず、多くはアリペイなどの決済機能か、クレジットカード払いだ。販売側と消費者が、代金の件で直接やりとりをしなくて済む。 そのため、消費者が騙される機会は減っているが、企業側にとっては、せっかくダブルイレブンで売り上げても、返品の山になる可能性が高くなり、今後、体力のない企業は、ダブルイレブンというビッグイベントをあえて避ける可能性も出てくるかもしれない。着実に売れる商品ならば、何も、このお祭り騒ぎの時期に販売しなくてもいいからだ。 すでに、一部のネット通販関係者の間では「消費者に飽きられてきたダブルイレブンは、その役割をそろそろ終えつつあるのではないか。今後は、一般の秋のセールという位置づけにシフトしていくか、あるいは、形態を変えていかないと、販売側やデリバリー配達員の負担だけが増加し、疲弊していくのではないかと思う」と語っている。
中島恵