中国、通信網から外国半導体排除 IntelとAMDに打撃
中国が自国の通信システムから米国の半導体メーカーを排除しようとしている。当局が国有通信大手に対し、ネットワークの中核を担っている外国製プロセッサーの使用を段階的に停止するように指示した。 中国政府は、技術開発の国内投資を強化しており、半導体産業もその重点分野の1つになっている。米インテル(Intel)や米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(Advanced Micro Devices、AMD)が打撃を受けそうだと米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)や米CNBCが報じている。 ■ 中国当局、国有通信大手に命令 関係者によると、中国で無線・放送・通信事業を監督する工業情報化省(Ministry of Industry and Information Technology、MIIT)は、27年までに通信インフラにおける外国製中核半導体の使用を停止するよう指示した。 通信事業者に対し中国製半導体の使用状況を調査し、米国製からの切り替えスケジュールを作成するよう命じた。国有通信大手の、中国移動(チャイナモバイル)や中国電信(チャイナテレコム)、中国聯合網絡通信(チャイナユニコム)に命令を出したもようだ。 対象分野は、通信機器用半導体のほか、データセンター向けサーバー用CPU(中央演算処理装置)だという。これらのサーバーは、基地局と連携して動作したり、携帯電話加入者のデータ保存したりする通信システムの重要部分を担っている。
■ 中国製半導体が台頭 関係者によれば、中国製半導体は、とりわけ高性能とは評価されていないものの、同国の通信事業者から支持されている。近年は、中国製CPUが大きな進歩を遂げているという。華為技術(ファーウェイ)子会社で半導体設計を手掛ける海思半導体(ハイシリコン)や、国産CPUと人工知能(AI)向け半導体を開発する海光信息技術といった企業や、国防科学技術大学などの機関が台頭している。 中国電信は23年10月にAIサーバーを約4000台導入したが、そのときのCPUは53%がインテル製で、残りはファーウェイ製「Kunpeng」(クンペン)だった。しかし、インテル製CPUのシェアは、最近低下している。 ■ 米国の対中規制も向かい風 台湾の調査会社である集邦科技(トレンドフォース)によると、インテルとAMDの2社は、世界のサーバー向けCPU市場でシェアの大部分を占めている。24年にはインテルのシェアが71%、AMDのシェアが23%になるとトレンドフォースは予想している。 だが今後は、中国の国産化政策によって、これら米国半導体大手の売り上げが減少する可能性がある。インテルは24年1月に公表した年次報告書で、中国が自社にとって最大の市場であり、23年は同社売上高の27%を中国が占めたと説明した。 AMDの年次報告書によると、中国は23年に同社売上高の15%を占めた。だが、この比率は22年の22%から減少している。 これは、米政府による高性能AI半導体の対中規制の影響を受けたものだ。インテルは年次報告書で、米中関係の悪化と中国の国産化政策による地政学的リスクを強調した。23年は売上高の6%に当たる32億米ドル(約4900億円)が米政府からの輸出許可によってもたらされたと説明。こうした米国の輸出管理政策によって左右される金額は、今度数年でさらに増加するとの見通しを示した。
小久保 重信