永瀬廉、坂東龍汰、前田拳太郎が人とコミュニケーションを取る上で大切にしていること「本音で会話していきたい」
映画「ふれる。」が絶賛公開中。同作は「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」「心が叫びたがってるんだ。」「空の青さを知る人よ」の青春三部作を手がけた、監督・長井龍雪、脚本・岡田麿里、キャラクターデザイン&総作画監督・田中将賀によるオリジナル長編アニメーション映画。幼馴染の青年3人組が、不思議な生き物「ふれる」を通して心を通わせていく物語だ。 【写真を見る】映画「ふれる。」小野田秋(声:永瀬廉)、祖父江諒(声:坂東龍汰)、井ノ原優太(声:前田拳太郎) 作品の中心を担う言葉でのコミュニケーションが苦手な少年・小野田秋を演じるKing & Princeの永瀬廉、幼馴染の祖父江諒を演じる坂東龍汰、同じく幼馴染の井ノ原優太を演じる前田拳太郎の3人に、俳優と声優の違いやお互いの演技への印象を聞いた。さらに人とのふれあいがテーマの本作において、3人が思うコミュニケーションの大切さについて探っていく。 ――今回はみなさんオーディションで選ばれたそうですが、オーディションに向けてどのような準備をされましたか? 永瀬「僕は台本を読んで家でセリフを言ってたくらいですね。いつも通りの感じで『よろしくお願いします』ってオーディションに向かったら、監督に『(オーディション時の声に)やさぐれた感じが少しあったのが良かった』って言われて(笑)」 坂東「もう天才ですよ。準備なんかいらないと」 永瀬「してたのよ! 全くしてないわけじゃないから(笑)」 ――そのやさぐれ感みたいなものが自然と出てたんですかね? 坂東「出てません?(笑)」 永瀬「......自然と出してましたね。3日前から準備して、それがちゃんとうまいこと出てくれてたからよかったのかなって(笑)」 坂東「僕は実家に帰省する予定だったんですけど、オーディションのために飛行機をキャンセルしました。もしキャンセルしてなかったらオーディションも受けられてなかったので、すごい運ですよね」 前田「僕は優太役としてオーディションを受けたので、3人のバランスを考えた時にどうしたらいいんだろうって悩みました。やっぱり優太というキャラクターは普通にやっただけではダメだと思ったので、いろんなアニメ作品を見て、どのキャラクターに近いんだろうとか考えながら作り上げていきました」 坂東「すごいね。でもそれで言うと、諒は野太い声のイメージだったので、『ONE PIECE』のゾロをイメージしてたかも」 ――永瀬さんはあえて作り込まなかったんですね。 永瀬「全然イメージしてなかったですね。頭の中ではこういう喋り方なんだろうなとか、こういうトーンなんだろうなというのは想像して、後は現場での感覚を大切にしました」 ――あえてなんか作り込まないのがよかったのかもしれないですね。 永瀬 「そうですね。普段から作り込むことをあまりしないタイプで、現場の雰囲気と監督さんが言ってくれたことに対して頑張って答えるとういうスタンスなので、今回のオーディションでも変わらずそのままでいきました」 坂東 「前半の3人のシーンを見ていて、秋が引っ張ってる感じがしたよね。リアルな芝居をしてくれているから、安心して見れるというか。廉のそのアプローチにすごく助けられたなって」 ――では、みなさんの役作りについても聞かせてください。俳優としてのお芝居と声優としてのお芝居とで、アプローチに違いはありましたか? 永瀬「僕はそんなに変わらなかったです。でも普通のお芝居では絶対ないようなこともアニメの世界の中ではやらないといけないので、そこはちょっと難しいなとも思いつつも、そこの違いは楽しみながらやれました」 坂東「声優は初めてだったので不安要素が多かったんですけど、いざ現場に行ってアフレコが始まったら、実際にこの声がどういうふうに諒というキャラクターについてくるのかを、長井監督が細かく指導してくれたので楽になりましたね。普段はカメラに全身が全て映ってるんですけど、今回は声に集中して表現しなければならないので、そこは全く違うアプローチだなと感じました。でも、表現の幅が狭まったようで、すごく広がってるんですよね。それがすごく面白い感覚でした」 前田「今回は声でお芝居をしないといけないので、自分の思ってる感覚で表現しても、いまいち伝わりきらない部分があったりしたんです。なので、いつもよりも自分の感情をもう大きめに出したりして。あとは優太を演じる上で、僕の見た目とは少し違うキャラクターなので、どういうふう声で表現するのかが難しかったです」 ――秋、諒、優太、3人の関係性についてはどう思われますか? 永瀬「秋にとって2人は大切な存在ですよね。とはいえ、秋は口下手なので、そこが伝わりづらい。でも、2人に対する態度から自分にとって大切な存在なんだなって垣間見える瞬間もあって。絵に描いたような共同生活をする3人がすごく羨ましいですね」 坂東「僕は生きていく中で友達って本当にかけがえのない存在だと思っていて。諒から見たら2人の存在ってめんどくさい部分もあると思うんですけど、3人を見ているとずっと友達でいられるんだろうなってどこかで感じるんですよ。諒を演じる上でなぜかその自信があったんです。『ズッ友』と言うと軽く感じますけど(笑)、親友を超えた関係がこの3人なのかなって」 前田「優太から見て、秋と諒って友達として大好きですし、すごくリスペクトを抱いているんです。だからこそ、卑屈気味になってしまうと思うんですけど、3人の関係性を自分と照らし合わせてみた時に、そういう関係ってすごくいいなと思いました」 ――今回は3人でアフレコすることも多かったと思うのですが、お互いの演技についてはどう思いましたか? 永瀬「優太は特に声を高くして演じている部分があるので、すごいなと思いながら見ていました。その設定をキープしたままお芝居するって、やっぱり難しいと思うんですよ。鳴子くん(坂東の呼び名)はドスを利かせる部分があって、普段の鳴子くんからは想像できない演技だったので新鮮さを感じました」 坂東 「廉は、初日にアフレコブースに3人で入って、第一声を聞いた瞬間から恋に落ちました。永瀬廉と聞くとまずは顔がどうしても思い浮かんだりすると思うんですけど、聞けば聞くほど秋にしか聞こえなくてすごいなと思いました。前ちゃんは(自分とは)全然違うキャラを演じるって、くすぐったくならなかった?(笑)」 前田 「顔が映ってたら多分できないです(笑)」 坂東 「わかる。前ちゃんも全く前ちゃんを感じさせなかったので、正直めっちゃ焦りました。あまりにも素敵な声だったので」 前田「ありがとうございます。実際に3人揃ってアフレコした瞬間に、これが正解だって2人を見て思いました。でも、龍汰くんが言ってくれた通り、2人の演技が想像を超えてきたからこそ、焦りました」 坂東「いいことだよね。お互い焦らせるっていうのは」 前田「それこそ秋は作品の中で振り幅が大きいキャラクターで、感情を出すシーンでは廉くんが引っ張ってくれましたし、龍汰くんもこの3人の雰囲気を作ってくれて、すごくありがたかったですね」 ――3人の和気あいあいとした雰囲気が伝わってくるのですが、アフレコ現場のエピソードを教えてください。 永瀬「マイクに近すぎるって怒られました(笑)。喋るたびにどんどん距離が詰まってしまうんですよ。監督に注意されるのはいいんですけど、鳴子くんにも注意された時はもう終わったなと思いましたね」 坂東「いや~面白いですよ、本当に(笑)。マイクの距離がわかんなくなるくらい入り込んじゃうんでしょうね」 永瀬「癖なんだろうね。歌ってる人って自分が心地いいマイクとの距離感があって、僕はいつもマイクに口をつけるんですよ。マイクを見ると近づきたくなるんですよね」 坂東「あと、前ちゃんは優太の役が抜けたままアフレコしたことがあったよね」 前田「ありましたね(笑)。同時に他の役もやっているので、優太が定まらなくなってくるんですよね。チューニングを合わせるのが少し難しかったです」 坂東「僕はマイク前で大暴れしちゃって...」 ――大暴れというと? 永瀬「ガサガサゴソゴソうるさいんですよ。まだマイクとの距離が近いほうがマシでしょ」 坂東「途中から靴脱いで裸足でやったりとか、色々と工夫はしてたんですけど、それでもうるさかったと思いますね」 永瀬「裏でのハプニングが多すぎて、3人とも問題児だったと思います(笑)」 ーー本作では人との繋がりを考えさせられるシーンがたくさん登場します。みなさんは人とのコミュニケーションで大切にされていることはありますか? 永瀬「相手が今どういう気持ちでいるのかを想像しながらコミュニケーションを取ることですね。それが当たってる当たってない関係なく、こういうことを言いたいんだろうなと自分なりに汲んでみたり、ほしそうな言葉を想像してみたり。ある意味気遣いながら話してる部分はあります」 坂東「この業界に入りたての頃は、なんでも知りたいという感じで人に対して興味津々だったんですよ。でも最近はこのお仕事をやる上で人との会話ってほんとに大事だなと感じさせられて。何も言わなくてもいい芝居が生まれるかもしれないけど、その前にお互いのプランとか気持ちのすり合わせができていた方が、さらに上のレベルに持っていけることが多かったので、本音で会話することも心がけています」 前田「最近はコミュニケーションについて考える機会が増えたんですけど、僕はコミュニケーションをサボりがちなんです。普通に会話はしますけど、自分が思ったことを伝えずに自分の中で消化してしまうことが多くて。やっぱり関係がこれで変わってしまったら嫌じゃないですか。でも、この『ふれる。』という作品を通して、自分の気持ちを伝えることの大切さに気づきました」 ――今回の現場ではお2人とは積極的にコミュニケーションはできたのでしょうか? 前田「2人がすごい話してくれるから自分からは遠慮してました。こういう時もっと行けばいいんですけど...」 坂東「でも、それはそれで俺は素敵だと思うんですよ。そういう奥ゆかしさみたいなものって自分にないからこそ、かっこいいなって」 永瀬「鳴子くんは2分喋んなかったら死んじゃうもんね」 坂東「この間、マグロって言われたもん(笑)」 永瀬「マグロだよね、絶対(笑)」 取材・文=川崎龍也
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