トランプ氏勝利で見えてきた「ウクライナ戦争の終わり」は日本経済にとってチャンスに エネルギー・食糧価格が低下すれば浮揚の道も
11月5日(現地時間)の米国大統領選は、共和党のドナルド・トランプ前大統領(78)の「復活」が鮮烈に印象づけられる衝撃的な展開となった。民主党のカマラ・ハリス副大統領(60)との大激戦により、世界一の超大国の「分断」の根深さが白日のもとに晒されることにもなったが、この結果は世界と日本の未来に、何をもたらすのか──当然ながらリスクも残るが、またとないチャンスでもある。【前後編の前編】
大激戦の米国大統領選を世界が固唾を呑んで注目した。ウクライナ戦争や中東の紛争の行方に影響を与え、世界経済の動向をも左右するからだ。 フタを開けてみれば、トランプ氏が早々に当選を確実とする“圧勝劇”に。沸き立つトランプ陣営と、沈痛な面持ちのハリス陣営はあまりに対照的だった。 今回の激戦が生んだ深刻な国内分断は「米国の民主主義の危機」と指摘され、混乱の最中にある米国が今後、「世界の警察官」の役割を果たせなくなっていくのは間違いないだろう。 だが、日本や世界経済に光明が差す面もある。ウクライナ戦争の“早期停戦”を掲げてきたトランプ氏により、今後、世界の資源・エネルギー需給に深刻な影響を与えてきた戦争が終わりに向かうと見られているからだ。 交戦状態は3年目に入ってウクライナもロシアも疲弊し、北朝鮮の援軍まで投入するプーチン大統領にとっても、これ以上の戦線拡大に利益はない。むしろ、「プーチンはどう自分が有利な形で幕引きを図るか、大統領選の決着を待っていた」(外務省関係者)とも見られる。国内の分断を抱えた米国が“出口戦略”を探り、停戦交渉に向けた動きが本格化する流れだ。
インフレが抑制される可能性
それが日本経済にはチャンスになる。第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏が語る。 「40年ぶりの世界的なインフレはロシアのウクライナ侵攻をきっかけに起きたわけです。欧米がロシアからの石油、天然ガスの輸入をストップし、小麦の大産地であるウクライナは戦争で輸出が難しくなりました。それが停戦や休戦に向かうとなれば、エネルギーや食糧の価格が落ち着いて、関連産業が活性化する可能性があります。 現実的には、停戦になったからといって欧米諸国がロシアの経済制裁を即解除することはないでしょう。しかし市場は先読みして動きます。戦争・紛争のエスカレーションの懸念がなくなれば価格は落ち着く展開があり得ます。制裁もゆくゆくは緩和に向かうという期待が出てくるからです」 日本のようにエネルギーや食糧の自給率が低い国は、国際的なエネルギー価格や食糧価格が低下すれば恩恵が大きいものとなる。 「原油価格が下がれば、天然ガスも下がるので、電気代・ガス代の引き下げにつながります。これは国内の多くの産業にとってプラスです。食糧価格の押し下げにもつながります。原油価格が下がれば、漁船の燃料費や冷凍設備のコスト、さらには野菜のビニールハウスの燃料費や電気代が安くなることで、魚介や野菜の価格も落ち着く可能性がある。 この数年の急激な物価上昇は円安が原因と言われてきましたが、実際は燃料高、食糧高の方がインフレに直接響いていました。ウクライナ戦争の停戦は、実質賃金低下など日本経済浮揚のネックとなってきたインフレの抑制につながる可能性があります」(永濱氏) たとえ大統領選で米国の分断が深まろうと、世界経済は大きく動き出すと見られているのだ。 (後編に続く) ※週刊ポスト2024年11月22日号
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