原爆で全焼からの復活…サミット夕食会に出された小さな蔵の酒
蔵の中には小さめのタンクが並び、甘やかな香りが漂っています。この醪をこしてしぼれば、お酒ができあがります。 原さん: うちの蔵は小さいので、造ったお酒はほぼ地元で消費されます。海外に輸出などは考えていません。もし、今回サミットで飲んでもらい気に入ってくれたのなら、また広島に来ていただきお酒を楽しんでもらいたい。「今回はうちのお酒を飲んでくれてありがとう」と首脳陣に伝えたいです。 蔵を代表する銘柄「蓬莱鶴」。名前の由来は、不老不死の仙人が住むとされる「蓬莱山」を宮島の弥山にみたて、鶴が舞う姿をイメージしたものだといいます。戦前に名付けられたときには、平和を願う折り鶴が広島のシンボルになるとは予想していなかったことでしょう。原爆ですべてを焼かれても舞い続ける鶴の姿が、サミット関係者の目にとまったのかもしれません。
■世界における日本酒の可能性
サミット期間中、各国の報道陣が集まる国際メディアセンターでは、広島や各地の日本酒をPRするイベントも数回行われました。 日本酒を飲んだイギリスから来た男性は、「飲み口がとてもスムーズだよね。香りが良いし、少し甘みもあって、とても美味しいと思う。イギリスで飲むと少し高いので、もうちょっと安くなるといいな」と話していました。 イベントに携わった佐々木酒造株式会社(京都)の代表取締役 佐々木晃さんによると、日本と海外では「飲み方の違い」があると言います。 佐々木さん: 海外の方は食前酒の文化があるからか、カー!っと一気に飲んでしまう。日本酒のグラスは食前酒のグラスとカタチや大きさが似ているから、そう誤解してしまうのかもしれない。 食中酒に位置づけられる日本酒は、本来は食事をしながらゆっくり楽しむもの。日本酒の飲み方、楽しみ方も伝えていきたいといいます。 佐々木さん: 私の蔵は京都にあって観光客のかたも多くいらっしゃるのですが、みなさん喜んで飲んでくださっています。日本国内の消費は減少傾向にありますが、輸出量は増え続けている。これから酒造業者が生き残っていくためには海外に目を向ける必要があると考えています。