鳥谷残留が阪神に残す火種
海外FA権を行使していた阪神の鳥谷敬(34)の残留が9日、決定した。阪神が鳥谷に提示していた残留条件は、5年20億円とも言われる超大型契約である。守備力は、12球団のショートの中でも1、2位のレベルで、143試合、フルイニング出場が期待できる肉体的な強さを持つ。そして打率3割をキープし四球を含めた出塁率の高さを計算できる3番打者。鳥谷は、それだけの条件を提示しても絶対に残しておきたい中心プレーヤーだった。中島裕之はオリックスに持っていかれたが、FA補強以上に価値ある残留である。 鳥谷には、ブルージェイズなど複数球団からのオファーがあったと全米メディアが報道していたが、納得のいく条件は得られなかったと見られる。マイナー契約からメジャーのロースターを勝ち取った川崎宗則のように銭金抜きで、ロマンを追う道も残されていたが、鳥谷は「熟考に熟考を重ねた結果」として阪神残留の道を選んだ。5年の複数年契約。5年後といえば39歳である。事実上、メジャー挑戦は断念したのだ。 同じ内野手で見れば、中日の立浪和義は40歳で引退。ヤクルトの宮本慎也が42歳。そう考えると、今回の残留は、阪神に骨を埋める覚悟を決めたとも取れる。鳥谷の究極のタイガース愛の裏返しである。 球団関係者の一人は、「将来、間違いなく阪神に指導者になっていく人物」と言う。実際、残留交渉の中で、そういう“監督手形”のような話も出ていたという。阪神の早大出身の内野手と言えば、今回の残留交渉を行っていた中村勝広GM、岡田彰布・元監督と2人の監督経験者がいる。阪神は電鉄体質ゆえ、そういうエリートを管理職に置きたがる。鳥谷は、阪神監督への王道を歩み始めたと言ってもいいだろう。 だが、一方で今回の鳥谷のメジャー移籍騒動がチーム内に火種を残すのではないかという声もある。鳥谷がなかなか去就を決めなかったことでチーム内は大混乱していた。秋季キャンプでは、大和のショートへの再コンバートをテスト。チームの内外からは、投手に与える影響力を考慮して「大和がセンターを離れるのは困る」という意見も出ていた。