軽量の太陽電池シート、ビニールハウスに設置し発電・栽培が両立…大阪大など開発
緑色の光のみを吸収する素材を使う
農作物の生育に必要な波長の太陽光は通過させ、残りの光で発電する特殊な太陽電池シートを大阪大産業科学研究所などのチームが開発した。環境に優しい有機素材で作り、軽量なためビニールハウスに設置可能といい、発電と栽培が同じ場所で行える。ハウス内の扇風機などの電力をまかなう計画で、淡路島(兵庫県)での実証実験に乗り出した。(村上和史) 従来のシリコン製の太陽光パネルは重量がある上、日陰部分の農業利用は難しかった。 同研究所の家裕隆教授(有機化学)らのチームは、太陽光に含まれる様々な波長の光のうち、植物の光合成にほとんど使われていない緑色の光に着目。緑色の光のみを吸収する素材を使った有機太陽電池シートを作製し、青色や赤色などの光は通過できるようにした。
「夏は露地よりも育ちがよかった」
実証実験は、淡路島での農業関連事業に参入している人材サービス大手・パソナグループ傘下の「Awaji Nature Farm」(淡路市)の協力で実施。同社のビニールハウスの天井に縦1メートル、横50センチのシート(1枚あたり約400グラム)を約20枚設置した。 今年夏には、発電した電力で夜間に自動散水を行い、ナスやピーマンを育てることに成功した。同社の村田善紀・生産事業部長は「シートが程よい陰を作って、夏は露地よりも育ちがよかった」と話す。 市販の材料も使うことで製造コストを下げ、シートが損傷しても土壌への影響が少ないのが強みという。
チームは、再生可能エネルギーの導入を進める岡山県真庭市と連携し、市内にある県立真庭高校の農業用ハウスでも12月から実証実験に着手する。耐久性や発電効率などを高めて2030年までの量産化を目指す。 家教授は「農地に必要な電力を農地でまかない、空調管理を進めることで、農業従事者の負担軽減にもつながる」としている。
野口伸・北海道大教授(農業情報工学)の話
「発電した電力で温度調節ができれば、猛暑による農作物の高温障害にも貢献しうる夢の技術だ。ただ一部の光のみを使っているため、農地での需要に見合う発電効率の向上が鍵になる」