大調査 確定申告で政治献金を取り戻す国会議員たち①寄付額の3割が戻るカラクリ(全3回)
情報公開制度を駆使し、調べる
国会議員による寄付控除の実態を明らかにするため、フロントラインはまず、全ての国会議員(定数は衆院465、参院245。計710)について、各議員が代表を務める政党支部の「政治資金収支報告書」をひっくり返した。この報告書は1団体で数十ページになる。その収入欄の内訳をチェックし、個人献金の内容に目を通し、どの政治家が自らの政党支部に寄付しているか、寄付している場合の金額はいくらかを順々に確かめた。 政党支部を持っていない国会議員は、共産党(衆院12人・参院13人)や無所属などしかない。つまり、600を優に超える政党支部の関連資料をチェックしなければならない。対象としたのは2015年から2019年までの過去5年間だ。 その結果、自分の政党支部に寄付した国会議員は、衆院で177人、参院で71人、合計248人に上ることがわかった。全体のおよそ3割である。 次の段階は、情報公開請求で関係書類を入手することだ。対象になるのは、「寄附金(税額)控除のための書類」という名称の公文書である。これがないと、政治家は政治献金の還付申告を申請できない。では、いったいどんな文書なのだろうか。 大きさはA4サイズ。政治家側は普通、以下の順番で「寄附金(税額)控除のための書類」を整える。 1.都道府県のホームページからダウンロードするなどの方法で書式を入手 2.政治家(政党支部)側は当該年に寄付してくれた個人のうち、確定申告において税額控除を希望する人の名前、住所、控除の対象となる寄付金額などを所定欄に記載 3.記入を終えたら都道府県選管に提出 4.選管は政治資金収支報告書の寄付額などと照合した上で、記載内容に間違いがなければ、その書類に確認印を押し、政治家(政党支部)側に返却 フロントラインプレスが開示請求したのは、47都道府県選管が保管している過去5年分の「寄附金(税額)控除のための書類」の写しである。政党支部の活動が複数の都道府県にまたがる場合は総務省の所管となるので、開示請求の相手は国になる。 請求して数週間から数カ月すると、全国各地の都道府県選管から封筒がどんどん届き始めた。開示書類のコピーがたくさん入っているため、封筒は分厚い。 都道府県選管から開示された膨大な量の書類からは多くのことが見えてきた。 自らの政党支部に寄付した国会議員248人のうち、84.3%は自らの寄付について寄付金控除のための書類を選管から受理していなかった。選管に書類を出して「確認印」をもらう際、寄付者の中から自分だけをリストから除いている国会議員も多い。つまり、大半の国会議員は、法律の網の目をくぐって甘い汁を吸おうとはしていないのである。 他方では、国会議員と生計を同じにしていると思われる親族が政党支部に多額の寄付を行い、その親族のみが税額控除のための必要書類を受理していたケースもあった。控除対象となった寄付の中には、親族による1000万円を超える寄付も散見された。親族の名を使って、政治家が還付金を手に入れた可能性もある。