大調査 確定申告で政治献金を取り戻す国会議員たち①寄付額の3割が戻るカラクリ(全3回)
法の特例を利用し、政治家自身が献金分の税額控除を受ける
「個人が行う政治献金は寄付金控除の対象となる場合があります」 国税庁ホームページのタックスアンサー(よくある税の質問)は「No.1154 政治献金と寄附金」の冒頭でそう記している。一定の要件を満たせば、政治献金は税額控除の対象となり、寄付金額の一部が戻ってくるという制度の概要を解説したものだ。 この優遇措置はそもそも、個人による政治活動への寄付を促すことで、国民の政治参加を活発にする狙いがある。 控除の対象となる寄付のあて先は、政党(支部を含む)や政治家の後援団体、派閥の政治団体、公職の候補者・立候補予定者の後援団体など。租税特別措置法では、寄付額の約3割が税額控除されるか、あるいは、課税対象の所得総額から寄付額を引いて税額を計算すると定められている。したがって、例えば税額控除の場合、仮に500万円を寄付したとすると、翌年の確定申告の際に寄付金控除を申請すれば、約3割の150万円がすでに収めた税金の中から戻ってくる計算だ。 もっとも、租税特別措置法には例外規定がある。「寄付をした者に特別の利益が及ぶ」場合は寄付金控除を申請できない、とされているのだ。具体的には、どのような事柄を指すのだろうか。財務省主税局税制一課に取材すると、担当者は次のように回答した。 「政治家自らが自分の資金管理団体や後援会に寄付したり、政治家が互いの後援会に寄付を出し合ったりする場合などが『寄付した者に特別な利益が及ぶ』に該当します。これらの寄付は寄付金控除の対象とはなりません」 ところが、これには“抜け道”がある。 自身が代表を務める「政党支部」に政治家が自ら寄付したケースに限っては、「特別な利益が及ぶ」とは解釈されておらず、寄付金控除の対象とされてきたのだ。つまり、政治家も「個人」であるから、政治献金を寄付金控除として申請できるが、自らの後援会や資金管理団体への献金は還付の対象にならない。還付を受ける唯一の方法が、政党支部への献金なのである。 この抜け道を利用し、政治家の中には、資金管理団体や後援会には直接寄付をせず、間に政党支部をはさみ、「政治家⇒政党支部⇒資金管理団体など」の流れとするケースが少なくない。政党支部を間に挟むことによって、政治家個人が所得税の還付を受けるためだ。ちなみに寄付金控除を受けることができるのは、国会議員と都道府県議会議員のみ。市町村議会議員は、自分が代表の政党支部に寄付しても控除を受けることはできない。 政党支部への寄付と還付をめぐっては、これまでも問題になったことがある。例えば、2017年には高市早苗総務相(当時)は、自らが代表を務める自由民主党奈良県第二選挙区支部に寄付し、所得税の還付を不当に受けたとして、市民から詐欺容疑で奈良地検に刑事告発された(結果は不起訴)。その他にも、この制度を悪用して不当に還付を受けたのではないか、との内容が時折報道されてきた。