一度は落車を覚悟も“火事場の馬鹿力”で1着!新田祐大が伝説のレースの裏側明かす「これは終わった、と」/競輪好プレー年間大賞
netkeirin特別企画「競輪好プレー年間大賞」授与式
netkeirin執筆陣でおなじみの東京スポーツ前田睦生記者が毎週厳選してきた「今週の競輪好プレー」。第3回は初のファン投票によって大賞を決定した。今回は年間大賞に選ばれた新田祐大選手に、受賞レースの裏話をインタビューした。
「これ終わった」と感じた瞬間からの火事場の馬鹿力
前田睦生記者(以下:前田) まずは第3回年間大賞受賞、おめでとうございます。今回は初のファン投票で選出しました。結果は圧倒的に2月の「春日賞争覇戦(GIII)」3日目12R S級 準決勝でした。このレースですが、金網に当たりそうになったという危険なシーンがあったんですけど、どのような状況だったか覚えていますか? 新田祐大選手(以下:新田) はい。嬉しいですね。あのレースは最初に自分がバックあたりから仕掛け、そのスピードが良かったため、先頭に立てばラインで決まるだろうと思いました。 しかし、突然目の前に2番車の嘉永(泰斗)君が現れて…彼は後ろを警戒して、牽制したんじゃなく、同じタイミングで抜こうとしていたんだと思うんです。その瞬間に前輪が浮いて、以前の落車のイメージが頭に浮かび、「これ終わった」と感じた。抜釘して4ヶ月ぐらいで、もうすぐでダービー復帰だなって思っていたのですが、思うようにはいかないなとも思いましたね。 前田 確かに、怪我もあった後そんなにも時間も経ってなくて…と思うと…。その後、立て直せたというか、金網が横に来て、前に8人いる状況になりましたけど? 新田 あの時は、自転車を急激に操作することは、スリップの可能性があったりと危険性がすごく高いと感じ、自転車が行きたい方向に行かせつつ、力を逃しながら金網にぶつからないよう願いました。結果的に金網と自転車の間が拳1つ分ぐらいのところで止まり、制御できたというか。そこから自分の位置も把握し、タイミングを考えずに仕掛け、力任せで行けるだけ行こうと思いました。 前田 ファンや選手、そして我々も、あの状態から捲りに行く姿に驚きました。「おー!これすごいぞ」と思ったら、そのまま1着まで走り抜く姿には、体のエネルギーの残り方などはまるでわからないが、圧倒されました。 新田 レース中、その瞬間は本当に火事場の馬鹿力みたいな感じだった。力任せで走り続けながら、残り半周ほどで近畿の2番手だった山田久徳選手と並走状態に。久徳君が前の選手を援護しつつ、車間を切りながら走っていました。体半分だけ出ちゃえば、「あとはなんとかねじ伏せてやる」という気持ちで行きながら、嘉永くんと久徳君の横を通過する場面をキーポイントとして注意しました。 意外と冷静に考えながらも力強くレースを走り抜けたので、多分細かくレース動画を見てもわかると思います。終わったあと、久徳君が「バックで締め込んで危ないですよー」と。いや、それはもう、すいませんと思いながら、嫌なところはすいませんがやりましたっていう感じでした。 前田 場内の声とかは聞こえました? 新田 歓声はすごかったですね。多分1番人気になっていたはずなので。ドンとぶつかられた瞬間は、自分がまずパニックになっている状態で、そこから金網にぶつからなかったことを機に今度は攻める体勢に入った時の、周りの空気感というか、音というか…。 入場者数で言ったらKEIRINグランプリなんか比にならないぐらい少ないとは思うんですけど、ちょっとKEIRINグランプリを彷彿とさせるようなどよめき。すごく体にも響くような感じはありました。音としては、動画としてすごくわかりやすい温度差というか、音量差が、この1つの映像でわかるのかもしれないかなと思います。