韓国戦の屈辱惨敗で露呈したW杯全員落第とハリルの限界
絞り出すように発せられた第一声に、怒りと失望感が凝縮されていた。韓国代表に1‐4の惨敗を喫し、EAFF E-1サッカー選手権2017決勝大会優勝を逃してから数十分後。日本サッカー協会の田嶋幸三会長(60)が、ファンやサポーターの心情を代弁するように切り出した。 「ひと言、情けない」 味の素スタジアムで16日に行われた最終戦。北朝鮮、中国両代表に連勝している日本代表は、1勝1分けの韓国と引き分けても2大会ぶり2度目の優勝が決まる状況だった。 そして、前半の開始早々にFW伊東純也(柏レイソル)がPKを獲得。FW小林悠(川崎フロンターレ)がゴール左隅に決めて幸先よく先制したものの、勝たなければ優勝できない韓国に直後から試合を支配される。 「我々は1点目を取ってから、プレーが止まってしまった。パワー、瞬発力、テクニック、ゲームコントロール。すべての面で韓国が日本を上回っていた。相手を称えるしかない」 自他ともに認める負けず嫌いのヴァイッド・ハリルホジッチ監督が、試合後の公式会見で淡々と白旗を上げるほどの惨敗。韓国に4失点以上を喫した敗戦は1979年6月の定期戦(ソウル)以来となるが、ホームとなると初対戦だった1954年3月のワールドカップ・スイス大会予選で1‐5で一蹴されて以来、実に63年ぶりとなる。 自身が生まれる前にまでさかのぼらないと見当たらない、まさに屈辱的な90分間に田嶋会長の怒りは収まらなかった。 「試合に負けることも、デュエル(1対1を表すフランス語)で負けることも悔しいけど、その後にがむしゃらに取り返しにいく行動が(なかった)。日本代表選手としての誇り、といったものをもっているのか。アジア最終予選で上手くいかなかったことなど、(ワールドカップ出場決定まで)いろいろとあったけど、そんなこととは次元が違うくらいの情けなさです」
日本を徹底的に研究してきた韓国に対して、あまりにナイーブすぎた。韓国は低い位置でブロックを形成し、縦に速く攻めてくるハリルジャパンがつけ入るスペースを消し去った。そのうえで日本がサイドに展開したときも、あるいは真ん中へ縦パスを入れたときも素早く潰し、さらに中盤におけるキーマン、井手口陽介(ガンバ大阪)にマーク役をつけてきた。 想定していた戦術がはまらなければベンチからの修正か、プレーする選手たちが機転を利かせる臨機応変さが求められる。しかし、ハリルホジッチ監督は動かなかった。いつもならテクニカルエリアで怒り心頭のゼスチャーを見せる展開で、ベンチに座ったまま戦況を見つめている。 2点のビハインドで後半を迎えても選手交代はなし。最初のカードは21分。井手口との交代で投入されたのは、攻撃系の選手ではなく、ボランチの三竿健斗(鹿島アントラーズ)だった。リードされる展開でA代表戦デビューを果たした21歳は、「(出場は)予想していなかったですね」と苦笑いするしかなかった。 指揮官は試合終了直後にも、思わず耳を疑うような言葉を残している。 「相手が日本より強いことは、試合前からわかっていた。韓国のほうが格上であり、勝利に値する」 格上を相手にしたときこそ、真骨頂を発揮する指揮官ではなかったのか。緻密な分析で相手を丸裸にし、ストロングポイントを消し去る戦略を練り上げる。来年のロシア大会出場を決めた8月のオーストラリア代表戦のような戦い方は、最後まで顔をのぞかせることはなかった。 ロシアの地で対戦するコロンビア、セネガル、ポーランドはいずれも日本より格上だ。FIFAランキング上では日本よりも下位の韓国に完敗し、この期に及んで「この大会を戦ったチームはA代表ではなかった」と言い訳を展開するようでは、指揮官の存在意義も問われかねない。