【島々の地域づくり事業協組】 移住促進、働き手確保へ 制度4年で発足5組合に
県1号、先進モデルに えらぶ島づくり特地事業協組
えらぶ島づくり事業協組は事業4年目を迎えた。後に続く奄美群島の特地事業協組はもちろん、全国の先進モデルとなっている。採用した派遣職員は今年5月末現在で、延べ28人になった。 事務局長の金城真幸さん(55)は、制度についてこう話す。 「いい制度だと思うが、それをどう活用していくかが鍵。移住者に、どう快適な住居環境を提供していくかというのは変わらぬ課題。それができずに移住を断念するケースがしばしば発生している」 制度の改善要望事項の一つに、事務局運営費の公的補助(上限600万円)の拡充を求める。「現状では職員1・5人ほどの経費にしかならない。組合の仕事は多岐にわたり複雑。派遣職員5~6人のシフトや給料の調整事務しかできないのではないか。この規模では地域内でのインパクトも小さい」 えらぶ事業協組の役割について、金城さんは次のような項目を挙げた。▽移住希望者と人手不足で悩む事業者との架け橋となる島の人事部▽働きやすい環境を整え人材が定着する組織づくりを支援するコンサルタント▽派遣職員の経験や知識、能力を生かして新たな価値を提供し、事業者の経営を下支えする組織。全国各地の組合との連携も構想している。 特地事業の目的に重なる独自事業の可能性も探り続ける。職員の待遇改善にもつなげたい考えで、22年10月から厚労相許可事業の「有料職業紹介」を始めた。さらに町の移住・定住促進事業の一部受託や、農業従事者の全国的な産地間連携にも取り組みたい考えだ。 ◇ えらぶ事業協組の各年度末の職員数(事務局含む)と組合員事業者数は▽2021年度 8人、9事業者▽22年度 10人、10事業者▽23年度 14人、11事業者。そして24年度は職員15人、事業者11。組合員として近く、初めて運輸関係の事業者が加入する見通しだ。 和泊町の伊集院農園は設立時からの組合員事業所。1年を通してバレイショ、花卉(かき)類などを生産・出荷してる。 そこに組合を通じて派遣された澤秀和さん(45)は奈良県生まれで、前職は大阪府の公務員。大阪の友人が先に沖永良部へ移住。昨年2度遊びに来て、気に入った。もともと「いつかは南の島で暮らしたい」と思っていたという澤さん。移住サービスサイト「SMOUT(スマウト)」を見ていたところ、金城さんにスカウトされ、組合制度を紹介され移住を決意した。 今年1月から知名町の移住定住促進住宅で、母(80)とふたり暮らし。2月から農園で、実習生ら11人の外国人と仕事をしている。「同僚の多くは外国人だが、みな気さくで毎日楽しい。ゆくゆくは決まった仕事に就くと思うが、まずは組合を通じていろんな仕事を体験したい。農業は一つの候補」と話した。 伊集院農園は島でも指折りの大規模農家。管理する畑は25㌶に及ぶ。代表の伊集院猛さん(57)によると、離農者が増加傾向で、「『借りてくれ』と言って集まってくる。畑が増えるのはいいが、どう生かすか。それも難しくなっている」という。 こうも話した。「人の確保は年々厳しくなっている。畑の間の移動もあり、外国人だけでは現場は回らない。島に農業をしに来てくれる外国人はここ数年で国籍が変わり、年齢層が高くなる傾向にある。若い人は来日しても首都圏の小売り関係や工場などに行くようだ。いろんな国同士の奪い合いも激しくなるだろう。そういった意味でも組合にはがんばってほしい」