【島々の地域づくり事業協組】 移住促進、働き手確保へ 制度4年で発足5組合に
人口の減少が続く奄美群島。その一方、新しい暮らしを求めて移り住んでくる人は多い。そこに至る経緯はそれぞれだが、4年前に創設された国の制度を活用した移住例が広がっている。受け皿となっているのは各地の「特定地域づくり事業協同組合」(特地事業協組)。今月26日に、鹿児島県奄美群島内5組合目が宇検村で発足した。先行する特地事業協組を訪ね、島で働く移住者、それを受け入れる事業者、そして事務局長らを取材した。各組合の現状と、関わる人々の思いを紹介する。
えらぶ島づくり事業協組は2021年3月に設立され、同年5月25日付で事業協組として知事認定を受けた。特地事業協組としては鹿児島県第1号で、全国13例目。複数自治体を事業地区としたのは全国初だった。 結成のキーパーソンは横浜市出身で、17~19年度の和泊町地域おこし協力隊、金城真幸さん(55)。町内の農家で働く外国人技能実習生の実情を調べる中で、島の働き手不足の深刻さと実習生を抱える事業者の悩みを知った。そして、その解決に向け始動。あの手この手と模索していたところに特地事業組合制度が誕生した。 協力隊は20年3月、3年間の任期満了で退任。協力隊OBという立場で、両町に特地事業組合制度の意義を語り、島の事業者に声を掛けた。9月には鹿児島県中小企業団体中央会(以下中央会)から担当者を招き、第1回事業者説明会を開催。年末にかけてさらに2回説明会を開いた。 参加した島の事業者らからさまざまな声が寄せられた。「組合に入れば、人をきちんと派遣してくれるのか」「派遣される人材は大丈夫か」 組合事業を展開する上での懸念事項もあった。「人を呼び込めるか」「住む家は確保できるか」「組合員事業者に支払ってもらう利用手数料や派遣職員に支払う給料水準はどうするか」 事業者には丁寧に説明を、中央会とは調整を繰り返した。有志による空き家改修や民間の遊休施設の活用などに着手し、住居の確保を進めた。 そして組合員8事業者(農業4、食品製造、医療法人、介護・福祉施設、小売り業各1)で組合設立。知事認定を受けて、事業が始まった。 採用第1号は21年9月3日の3人。派遣先は花卉(かき)とバレイショの農家。初年度の採用者はIターン7人、Uターン1人の計8人になった。誕生間もない組合が移住者であり働き手でもある8人を島に呼び込んだのだ。