早春の〈清水寺〉と現代美術の取り合わせを楽しもう! 『ARTISTS’ FAIR KYOTO 2024』関連展示が開催中。
床の間のミヤケマイの作品は龍がモチーフだ。龍は雷、つまり光と水を司り、水を呼び、すべてのものに変化をもたらす存在だ。掛け軸の円には「ALL FOR ONE / ONE FOR ALL」と書かれている。このラグビーのオールブラックスの有名な言葉が、和の美を現す掛け軸になっているのが面白い。
『ARTISTS’ FAIR KYOTO』のディレクターでもある椿昇は「月の庭」の「誰ガ袖手水鉢」に小さなヤンマのオブジェを置いた。産卵のために尻で水面を叩く、ヤンマはこの動作を数億年も前から続けているのだという。美しい庭の一隅でひっそりと、命をつなぐための営為が行われている。
『ARTISTS’ FAIR KYOTO 2024』では過去に『ARTISTS’ FAIR KYOTO』に出品した作家と企業とがコラボレーションしたサテライトイベントも行われている。そのうちのひとつ、「旅と夢」をテーマにしたグループ展『Travels and Dreams(in daily life)』は〈NTTインターコミュニケーション・センター〉の主任学芸員、畠中実のキュレーションによるもの。パンデミックによって移動が制限され、またテクノロジーの発達によって実際にその場に行かなくても多くの情報を得ることができるようになった。この変化を体験した私たちには、それまでとは違う風景が見えているはずだ。
歴史を感じさせる場に現れた現代美術が古都の景色を大胆に変えていく。アートフェアで作品を購入するのも、〈音羽山 清水寺〉やサテライトイベント会場で作品を鑑賞するのも楽しいイベントだ。
『ARTISTS’ FAIR KYOTO 2024』
メイン会場は〈京都国立博物館 明治古都館〉(一般 2,000円ほか)、〈京都新聞ビル〉 地下1階(入場無料)の2カ所。2024年3月1日~3月3日。アドバイザリーボードによる展覧会(600円)は3月1日~3月10日、〈音羽山 清水寺〉にて開催中。3会場に入れるセット券もある。さらに若手批評家育成プロジェクトやオフィシャルシンポジウム、京都の街なかで開催されるサテライト展『ARTISTS’ FAIR KYOTO :SATELITE 2024』、オープンスタジオ企画など各種のイベントを開催。 ●参加アーティスト一覧 〈京都国立博物館 明治古都館〉(33組):石田成弘、石山未来、伊藤美優、内海紗英子、遠藤文香、大上巧真、岡本ビショワビクラムグルン、Officell、清方、Christopher Loden、小西梨絵、佐藤壮馬、伸島ゆい、品川美香、德永葵、鳥越愛良、西垣肇也樹、西村大樹、西凌平、久村卓、方圓(Fang Yuan)、ブルノ・ボテラ、松岡勇樹、松元悠、丸井花穂、三宅佑紀、森山佐紀、森夕香、山羽春季、山本和真、吉浦眞琴、廖元溢(Liao Yuan Yi)、リュ・ジェユン 〈京都新聞ビル 地下1階〉(11組):カタルシスの岸辺、倉知朋之介、志賀耕太、花形槙、宮原野乃実、保良雄、山田愛、山本将吾、米村優人、米山舞、劉李杰(Liu Lijie) 〈音羽山 清水寺〉アドバイザリーボード(16組)※ディレクター含む:池田光弘、伊庭靖子、薄久保香、大庭大介、加藤泉、鬼頭健吾、田村友一郎、椿昇、鶴田憲次、名和晃平、Bosco Sodi、ミヤケマイ、やなぎみわ、ヤノベケンジ、やんツー、Yotta
text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano