なぜ女性は自己免疫疾患にかかりやすいのか、三毛猫と同じしくみが関係していた、最新研究
X染色体と全身性エリテマトーデス
一方、フランスの研究チームのルージュル氏は、X染色体が完全に不活性化されなかった場合に何が起こるのかを知るために、エピジェネティクス研究者のセリーヌ・モレー氏と共同研究を行った。 彼らは、X染色体の不活性化が不完全なメスのマウスを作成した。研究者らは、マウスが自己免疫疾患を発症するとは予想していなかったが、意外にも全身性エリテマトーデスのような症状を示した。 「自己免疫疾患の症状はすぐには認められませんが、マウスが年を取るにつれて現れてきます」とモレー氏は言う。 ルージュル氏は、自身の研究とスタンフォード大学の研究について、どちらもX染色体やその不活性化プロセスと、自己免疫とを関連付けている点が共通していると言う。 X染色体の不活性化に関わるメカニズムは、全身性エリテマトーデスやシェーグレン症候群などの自己免疫疾患における性差を説明しているように思われるが、「すべての自己免疫疾患に共通する単一のメカニズムが存在するわけではありません」とギュエリー氏はくぎを刺す。
自己免疫疾患の発症の予測に使えるか
スタンフォード大学の研究では、全身性エリテマトーデス、強皮症、皮膚筋炎などの自己免疫疾患患者の血液中には、Xistに関連する多くのタンパク質に対して自己抗体が存在することがわかった。 自己抗体の中には、特定の自己免疫疾患だけに関連するものもあれば、複数の疾患に共通するものもあった。したがって、この発見は、異なる疾患を区別するのに使える自己抗体検査パネルの開発につながる可能性がある。 だがルージュル氏は、現在の研究では、自己抗体レベルが発病前に有意に上昇するかどうかは示されていないため、診断ツールの開発にはさらなる研究が必要だと述べている。
文=Sanjay Mishra/訳=北村京子