坂本龍一の大規模展覧会コラボ参加者たちがコメント「我々アーティストがこの世に何を残せるのか」
坂本龍一の大型インスタレーション作品を包括的に紹介する、日本では初となる大規模展覧会「坂本龍一|音を視る 時を聴く」が、東京・東京都現代美術館で12月21日に開幕。その前日12月20日のプレス向け内覧会に合わせて、コラボレーションアーティストたちが登壇する記者会見が行われた。 【写真はこちら】目の前によみがえった坂本龍一がピアノを弾く ■ 坂本さんが特に届けたかったことを、一緒に体験していただきたい 会見に出席したのは、高谷史郎(ダムタイプ)、カールステン・ニコライ、岩井俊雄、中谷芙二子という参加アーティスト4名と、ゲストキュレーターの難波祐子氏。現代美術のキュレーターとして2013年頃から坂本といろいろな仕事をしてきたという難波氏は、坂本が「音をどのように展示空間に設置していくか」「インスタレーションによって音楽の持つ可能性がどう広がるのか」を追求していたと説明し、「ただ日本では、そういったものを単体の作品として展示することはあっても、公立の美術館で大規模にご紹介するのは初めての試み」「坂本さんが特に届けたかった『時間とは何か』『音を立体的に展示するとはどういうことか』というのを、一緒に体験していただきたい」と記者たちに呼びかけた。 ■ 展覧会の会場でいろいろとはみ出しているところがあるかもしれません この展覧会で最も多くの作品に携わっているのは高谷史郎。坂本が長年意識していた「時間とは何か」という問いを夏目漱石「夢十夜」や能の演目「邯鄲の夢」といった物語で表現する「TIME TIME」、東日本大震災の津波に流された宮城県農業高等学校のピアノを「自然によって調律されたピアノ」と捉えて作品化した「IS YOUR TIME」など、彼は5点の作品で坂本とコラボしている。 会見で高谷は、坂本について「インスタレーションを作るときはインスタレーションの枠をはみ出るようなことをいつも考えておられました」と振り返り、「今回も展覧会の会場でいろいろとはみ出しているところがあるかもしれません。けれどそれは、坂本さんが体験してもらいたいと思うことなんですよね。どのコラボレーターの作品もですけど、そのようにじっくり鑑賞していただけたらありがたいです」と話した。 電子音楽家としてこれまでに何度も坂本とのコラボ作を発表してきたアルヴァ・ノトことカールステン・ニコライは「今回の新作映像は、これまで坂本さんと一緒にコラボレートしてきた続編」と説明。展覧会に参加したことについて「今回の作家さんたちと一緒に作品を展示できることに意義を感じており、コミュニティ性の大切さを痛感しております」と感謝を述べた。 ■ 我々アーティストがこの世にいったい何を残せるのか 岩井俊雄が出展したのは、もともと1996年に茨城・水戸芸術館で初演された作品。「アルスエレクトロニカ97」での坂本のコンサートでの演奏を記録したMIDIデータおよびその記録映像を使い、坂本愛用のMIDIピアノによって、まるで坂本が目の前によみがえったかのように展示室内でパフォーマンスを再現する。 岩井はこの作品について「坂本さんが亡くなる少し前にNHKスタジオで『Opus』というコンサート映画を撮影されていたときに使われた、坂本さんご自身が所有されていたピアノと、座られていた椅子が使えることになりました」と明かし、「展覧会全体のテーマにもつながるんですが、我々アーティストがこの世にいったい何を残せるのか、ということが、僕の関わったインスタレーションから伝わってくるんじゃないかと思います」とコメントした。 ■ 坂本さんは本当に霧を愛していらした 中谷芙二子は、人工的な霧を大量に発生させる「霧の彫刻」と呼ばれる作品を、50年以上にわたって世界各地で発表し続けている91歳のアーティスト。本展覧会では美術館屋外のサンクンガーデンに設置され、高周波の持続音が鳴り響く中で、視界を奪うほどに濃い幻想的な霧が鑑賞者を包み込む。なお内覧会では、この濃霧の中で田中泯による場踊りが披露された。会見で中谷は、このあと行う内覧会でのプロジェクトに向けて「1つだけ申し上げたいのは、坂本さんは本当に霧を愛していらしたんだなということ。今日はそれを感じながら操作させていただいて、対話をしたいと思います」と語った。 この日に登壇したアーティストのほかに、本展覧会には真鍋大度、アピチャッポン・ウィーラセタクン、Zakkubalanも参加している。会期は2025年3月30日まで。