トヨタやユニクロですら「誰も注目しない時期があった」事実が映す株式投資の本質
新NISAがスタートし、株価も高水準で推移する中、株式投資を始めた、あるいはこれから始めようと検討している人もいるだろう。お宝銘柄に投資することは可能なのだろうか。1冊で2000ページにも及ぶ『会社四季報』を27年間で108冊全ページ読破する渡部清二さんは、「個別株には圧倒的な爆発力がある」と言う。新著『そろそろ投資をはじめたい。』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成してお届けする。 トヨタまでスポンサー撤退で商業五輪「終わりの始まり」…章男会長「政治色も強くなり」とバッサリ ◇ ◇ ◇ 書店の「投資コーナー」を見たことはありますか? 株式投資やFX、仮想通貨、不動産投資など、そこにはさまざまな種類の「投資本」が並んでいます。 個別株投資には、圧倒的な魅力があります。それは「爆発力」です。 みなさんもニュースなどで一度は聞いたことがあるであろう日経平均株価。第二次世界大戦後に東京証券取引所が再開された翌年、1950年6月に月足終値で最安値をつけますが、そこから2024年7月高値までで500倍弱も上昇しました。 ところが、同じ期間でもこの数字を大きく上回り、「28万倍」にまで成長した企業があります。それは、トヨタです。 1950年6月のトヨタの最安値は、23円50銭でした。1000株買うと、2万3500円。物価を四季報の販売価格で考えると、当時の価格は150円で現在は2600円(税込み)と約17倍になっていますので、当時の2万3500円は、今の価値で40万円くらいでしょうか。
28万倍になったトヨタ
仮に、1950年に買った1000株を2024年まで持ち続けていたとすると、株式分割(1株をいくつかに分割し、発行済みの株式数を増やすこと)による株式数の増加も含めて、その価値は約「28万倍」に増加して、当時の2万3500円は実に60億円以上になっているのです。 株式分割を考慮して株価を修正したものを「修正株価」といいますが、トヨタの修正株価は1950~1960年の10年間で1000倍になりました。その後、1000倍から1万倍と10倍になるのに約20年、1万倍から10万倍と10倍になるのに約25年を要しました。 今でこそ、世界にその名を知られているトヨタですが、株価の変遷を見ると最初の10年間で爆発的に伸びていたことが読み取れます。 この事実からわかること。それは、トヨタもかつては「誰も注目しない中小型株」だったということです。ソニーや本田技研工業(ホンダ)、松下電器産業(現パナソニックホールディングス)の株価も安値から高値まで普通に2万~3万倍になっていますが、トヨタ同様にかつては中小型株であったのです。 この話をすると、「それは戦後間もなかったり、日本が急成長していたりした昭和の時代の話じゃないの? 現代だとそんな企業は生まれないでしょう」といった諦めの言葉も聞こえてきます。そう思ってしまう気持ちはわかりますが、実はそんなこともないのです。 1994~1996年に上場したソフトバンクグループやファーストリテイリング、ヤフー(現LINEヤフー)などの誰もが知る有名企業はいずれも、安値から高値までは100~500倍弱になっています。 ちなみにこれらの企業が躍進したのは、日経平均株価が1989年の史上最高値をつけたあと、約20年かけて8割下がるバブル崩壊の時期でした。このときに個別株投資ではなく、株価指数と連動する「インデックス投資」をしていたら、最大で8割下がっていたのです。 また、TOPIXなどの株価指数を上回るパフォーマンスを目指す「アクティブ投資」といわれる投資信託では、「8割がTOPIXに負けている」という事実もあり、「年間1%でも勝ったら優秀」ともいわれています。とすると、やや乱暴な表現にはなりますが、投資信託を買うより、目を閉じて適当に『会社四季報』をめくって、銘柄を選んだ方が、よほど勝つ確率は高いのではないかと思ってしまいます ▽渡部清二(わたなべ・せいじ)複眼経済塾 代表取締役・塾長 1967年生まれ。1990年筑波大学第三学群基礎工学類変換工学卒業後、野村證券入社。野村證券在籍時より、『会社四季報』を1ページ目から最終ページまで読む「四季報読破」を開始。25年以上継続しており、2024年秋号の『会社四季報』をもって、計108冊を完全読破。2013年野村證券退社。2014年四季リサーチ株式会社設立、代表取締役就任。2016年複眼経済観測所設立、2018年複眼経済塾に社名変更。清泉女子大学にて就職講座を6年担当するなど、投資家以外への教育にも熱心に取り組んでいる。『会社四季報の達人が教える10倍株.100倍株の探し方』(東洋経済新報社)がベストセラーになり、その後著書多数。