2024年の上場企業倒産、「日本電解」の1社のみ
コロナ禍以降5社目、今後もコンプライアンス遵守が焦点に
2024年の上場企業倒産(12月27日16時現在)は、日本電解(株)(東証グロース)の1社のみとなった。コロナ禍以降(2020年以降)では5社目となる。 上場企業倒産は、リーマン・ショックが起きた2008年にマンションデベロッパーなどの倒産が相次ぎ、過去最多となる33社となった。しかし、その後はアベノミクス効果や事業再生ADRなど私的整理メニューの拡充を背景に減少し続け、2013年以降は年間3社以下の状態が続き、24年は22年、23年に続き3年連続で1社となった。
上場企業の業績は総じて好調が続き、倒産の増加が目立つ中小企業と比べ小康状態が続いている。ただ、近年の上場企業倒産を振り返ると、2020年は金融商品取引法違反の嫌疑で強制調査が入った(株)Nuts(ジャスダック)、2022年はインサイダー取引や金融商品取引法違反で関係者が逮捕されたテラ(株)(東証スタンダード)、2023年は雇用調整助成金の不正受給の発覚、元会長、前社長が金融商品取引法違反の疑いで逮捕された(株)プロルート丸光(東証スタンダード)と不祥事が引き金になっていることから、業績動向のみならずコンプライアンス面に焦点を当てて動向を見守る必要がある。
日本電解が民事再生法の適用を申請、米同業者買収が裏目に
日本電解(株)は、茨城県筑西市に本社を構え、車載電池や回路基板で使用される電解銅箔の製造を手がけてきた。2020年には米国の電解銅箔メーカーであるDAI社を買収。2021年に株式上場し、2022年3月期には年売上高(連結)約206億円、営業利益約10億円を計上していた。また、米国市場向けの供給能力を増強するために2023年にDAI社の工場に新しい製造ラインを完成させたほか、別途、米国内に新工場建設の計画を進めることになっていた。 しかし、世界的な半導体不足や米国インフレ抑制法施行による国内製造バッテリーの輸出減少、スマートフォン需要の減退、工場建設費の負担などで2020年3月期以降はDAI社の売上減少と赤字が続き、2023年3月期(連結)は年売上高約170億円、約18億円の経常赤字、2024年3月期は年売上高約166億円、約12億円の経常赤字となったほか、2025年3月期では約53億円の当期純損失を見込んでいた。一方で2024年5月頃からスポンサー探索も行ったが、過大な金融債務などもあって支援意向を示す先は見つからず、今後の返済も困難となることから、自主再建を断念。11月27日に東京地裁へ民事再生法の適用を申請した。