世界記録につながった残り7kmの川野のスパート「来年の世界陸上で勝負をすることを意識して歩いていました」【35km競歩世界新・川野将虎インタビュー前編】
川野:今まで国際大会でメダルを取ってきたシューズに履き替えて、本当に競歩らしい動きをしようと考えました。踵から接地して支持脚に体重を乗せて。そういう動きをイメージして歩きました。 ――かなり難しいタイミングの決断ですが、練習で感じていた部分があるのですか? 川野:最終的な調整練習を瑞穂コーチも毎日、動きを本当に丁寧に、細かくチェックしてくださいました。厚底に近いシューズよりオレゴン、ブダペストで履いてきた従来型を改良したシューズの動きの方が、高畠で失格せずに代表権を獲得するにはいいのではないか、というご意見をいただきました。競歩にとっては歩型もそうですが、動きを客観的な視点で見ていただくことが一番大切なことだと思います。ただ速く歩けばいいのではなく、審判から見て正しい動きができることが第一で、その上でスピードを出すことを考える競技なので。瑞穂コーチの視点は間違いなく、自分の感覚以上に正しいと信じられました。 ――ラスト4kmが4分04~06秒。課題だということですが、現時点では評価できる部分もありますか? 川野:世界で入賞できる選手でも高畠のラスト5kmは大きく落ちてしまっているので、今回5km毎を全て20分台でまとめられたのはよかったと思います。しかし先ほども言いましたが満足はしていなくて、来年の世界陸上では最後まで安定して3分台で歩かないといけません。高畠のラスト5kmも世界陸上で勝負をすることを考えて、1秒でも速くというところを意識していました。ただ今回は8月にオリンピックがあって、2カ月半と準備期間が短い中、オリンピックの疲労も完全に抜けない状態でした。合格点は出せるのかな、と思います。 ■「世界記録保持者に見合う人間性も身につけていかないといけない」(川野) ――06年にカナイキンが出した2時間21分31秒は、35km競歩が正式種目になっていなかった頃の記録で非公認ですが、そのタイムを目指して練習に取り組んでいたのですか? 川野:その記録を出せる準備はしていかないといけない、というイメージで練習してきました。実際はそれよりもスローになる可能性も考えていましたが、世界記録くらいのハイペースになった際について行く実力がないと勝負できない、代表権を取れないと思っていました。