混迷深まる善光寺騒動 小松貫主が退任撤回し住職らを告訴
年明けに退任を表明していた長野市の善光寺大勧進(天台宗)の小松玄澄(げんちょう)貫主(かんす)(84)が9日、市内で記者会見し、退任の撤回を表明しました。併せてこれまで同貫主の辞任などを求めてきた天台宗一山の一部住職、大勧進関係者ら11人を業務妨害などの罪で長野地検に告訴しました。 【写真】善光寺の大勧進問題、退任表明の小松貫主が職務復帰(2018年1月)
セクハラ疑惑を否定「人権無視耐えられない」
「大勧進」とは、善光寺内にある寺務を司る寺。善光寺は天台宗の大勧進と浄土宗の大本願が共同で運営しています。 これまで一山の一部住職らが貫主に差別的発言があったなどとして、本堂に上る「昇堂」の停止などを求めてきましたが、同貫主は差別的発言などの事実はないとして、「(大勧進を)正常化したい」と退任撤回の理由を説明。事態はいったん収拾の動きから再燃し、混迷を深める様相に市民らの困惑が広がっています。 小松貫主は、大勧進の女性従業員への差別発言をした恐れがあるなどとして、2016年に一山の一部住職、信徒らから貫主の辞任を求められていました。同貫主は今年1月になって時期を明示しない「しかるべき時期の退任」を表明。事態は落ち着きに向かい、同貫主も一時停止していた昇堂を再開していました。 一転して退任を撤回した理由について、小松貫主は代理人弁護士と同席の会見で「(貫主が早朝昇堂する)お朝事(おあさじ)も欠けてしまうなど何百年もなかったことが生じた。元の大勧進に戻ってほしい。(大勧進を)正常化したいという気持ちです」と、一連の混乱から正常化に向けて力を尽くしたいためと説明。 同時に差別的発言やセクハラなどがあったとされたことを否定。「(そうした指摘の)人権の無視には耐えられない」とし、昇堂停止や辞任の勧告なども含め業務妨害と強要の罪で、一山の一部住職や大勧進関係者ら11人を長野地検に告訴したと明らかにしました。 告訴状では、差別的発言やセクハラなどの指摘は貫主本人の事情聴取などの手続きを経ない一方的なもので不当だとし、謹慎や昇堂停止の措置は一山の規定を不当に適用したもので、貫主の名誉を侵害したとしています。 小松貫主による1月の退任表明で、いったんは事態収拾かと思われた大勧進問題は、この告訴で再燃の動き。県内に限らず全国でも注目を集めた問題だけに、地元の市民らは「また混乱が続くのかと思うとやりきれない」「長引く問題で善光寺さんへの尊敬の念が薄らいでしまうようなことがあってはならない」と、戸惑いを隠せない表情です。
---------------------------------- ■高越良一(たかごし・りょういち) 信濃毎日新聞記者・編集者、長野市民新聞編集者からライター。この間2年地元TVでニュース解説