京成電鉄がオリエンタルランド株を一部売却…背景にある英アクティビストとの熾烈な駆け引き(小林佳樹)
【経済ニュースの核心】 京成電鉄は11月27日、保有するオリエンタルランド(OLC)の株式を一部売却した。OLCが実施した自己株式立会外買付取引に1800万株を応募した。売却価格は1株あたり3435円で、総額618億3000万円。売却後の議決権保有割合は20.17%となる。OLCは、株式の需給や既存株主への影響を軽減するため、取得した株式は消却する方針だ。 オリエンタルランド初の女性CEOは新エリア開発を主導 大輪の花を咲かせられるか 京成電鉄は2021年からアクティビスト(物言う株主)として知られる英ファンドのパリサー・キャピタルに株式2%弱を保有され、揺さぶりをかけられている。パリサーは、「京成電鉄が持つOLCの保有割合を15%未満に引き下げるよう求めている。さらに、ここにきて過激な和製アクティビストとして恐れられる旧村上ファンドも、株付けしたとの情報もあり、風雲急を告げている」(市場関係者)というわけだ。今回のOLC株売却の背景には、アクティビストの圧力が影を落としている。 ■オリエンタルランドは一種の祖業 京成電鉄は明治時代の1909年に、成田山新勝寺の参拝輸送を目的に設立された「京成電気軌道」がルーツだが、5代目社長で京成電鉄を大きく飛躍させ、「中興の祖」と称された川崎千春氏は、三井不動産の江戸英雄社長(当時)らとともに、OLCの設立計画趣意書をまとめ、初代社長に就いた立志伝中の人物だ。「京成電鉄がOLCの大株主であるのは、川崎氏がOLCの生みの親的な存在であることと関係している。京成電鉄にとってOLCは一種の祖業のようなもの。アクティビストから言われたから、はい売りますというわけにはいかない」(メガバンク幹部)という。 京成電鉄は3月にOLCの発行済み株式(自己株式除く)の1%分を売却すると発表し、700億円強を24年3月期に特別利益として計上した。今回の売却はこれに次ぐものだが、「ドル箱路線の成田空港では滑走路の新設など拡張計画が打ち出されており、さらなるインバウンド需要が見込まれる。発着回数の増加など輸送力の強化は不可欠」(メガバンク幹部)とされる。売却資金は車両基地の建設や整備などに充当されることになろう。 また、旧村上ファンドの株付けについては、「旧村上ファンドは京成と同時に京急にも株付けしている。成田空港からのアクセス線を持つ京成と、羽田空港への路線を持つ京急は相互シナジーがあるとして、統合を働きかけてくるのではないかとの見方も浮上している」(市場関係者)という。 (小林佳樹/金融ジャーナリスト)