少年犯罪を防ぐのは「厳罰」か「教育」か 相次ぐ少年法改正の背景は
減少傾向にある「少年犯罪」
それでは、厳罰化によって少年犯罪は本当に減るのでしょうか。 少年法が大きく改正された2000年の少年による刑法犯総数は13万2336件 、そのうち凶悪犯(殺人・強盗・放火・強姦)は2120件でした。2001年には13万8654件(凶悪犯2127件)、2002年には14万1775件(同1986件)と増加します。 ただ、2003年の14万4404件(同2212件)を境に減少となり、今年2月に発表された「少年非行情勢」では、刑法犯は2004年から2013年までは10年連続で減少していることが報告されています。2004年の検挙人員は13万4847人(同1584人)でしたが、2013年には5万6469人(同786人)にまで減っています。また、同年齢層人口1000人あたりの検挙人員も16.8%から7.8%へ減少しています。ただし、成人の場合は10年間2%前後で推移しており、成人と比べて少年が高い確率で検挙されていることが分かります。
「少年法の精神」を重視する考え方
近年、少年犯罪が減少傾向であることが分かりますが、それでも厳罰化に異を唱える専門家は少なくありません。ひとつは、2000年以降も少年による重大事件は起こっており、厳罰化では防げない事件があること。そしてもうひとつは、少年法は罪を犯した少年に対し保護と更生の機会を与えるものという考え方があるからです。 そもそも罪を犯してしまう少年については、その成長過程で充分な教育や愛情を受けられなかったり、虐待を受けていたりというケースもあります。罪の重大さを理解できないからこそ残酷な罪を犯してしまうという場合もあり、罪の重さを認識させるためにも、適切な教育が必要です。 少年法は少年の可塑性に着目しているとされています。可塑性とは、成長によって人格が柔軟に変化していくことであり、すなわち少年は成人よりも更生の余地が大きいことが期待されています。更生して社会復帰することが許せないと考える人もいますが、本当の更生とは自分が犯してしまった罪の重さと生涯向き合わなければならないことであり、罪と向き合いながら社会生活を送ることも、償いの一つという考え方もあるでしょう。 厳罰化に賛成する人、反対する人の両方で一致しているのは、「罪を犯した少年はきちんと罪と向き合い、内省を深めなければならない」ということです。そのために行うべきことは厳罰化なのか、更生への教育なのか、その両方なのか。議論をこれからも続けていく必要があるでしょう。