タクシーの初乗り料金が370円に?国交省が導入をめざす理由
国土交通省は、タクシーの初乗り距離を短くする代わりに初乗り料金を引き下げる方向で検討を始めた。来年度に予定されている実証実験では、東京23区なら初乗りが「880mで370円」になる可能性も出ている。国はなぜ今、タクシーの初乗り距離の短縮化と料金引き下げに乗り出すのだろうか。 「白タク」が日本でも解禁?実現には懸念の声も
先月23日に国土交通省が開いた「運賃制度に関するワーキンググループ」の初会合。大学教授やタクシー事業者、関係する労働組合、消費者団体などの代表者が参加し、初乗り距離と運賃の引き下げについて話し合われた。同省は来年度、関心のある地域・事業者を対象に、期間限定で初乗り距離の短縮化と料金引き下げの実証実験を行う予定で、来年6月には実証実験の具体的な方法についてとりまとめる予定だ。
低迷を続けるタクシー需要
「初乗りの距離を短くし、初乗り料金を引き下げる」という提案が出るようになった背景には、タクシー需要低迷の長期化がある。2015年度の国土交通白書によると、ハイヤー・タクシーの年度ごとの輸送人員数は2000年代前半は19億人を超えていたが、 2007年度に19億人を割り、リーマン・ショックのあった2008年度以降は大幅に減少。その後も減少が続き、2013年度は15億人を割った。 国土交通省は今年1月、低迷したタクシー需要の活性化に向けた方向性を議論するため、業界団体や有識者を集めた「新しいタクシーのあり方検討会」を発足。そこで新たなタクシー需要として注目されたのが、近距離の移動だった。今後高齢化が進むにつれ、買い物や病院への通院など、日常生活での短距離の移動サービスの需要がいっそう高まると考えられるためだ。 8月に検討会が発表した中間とりまとめでは「タクシーの利用を躊躇する潜在的な需要の顕在化を図る上で有効」だとして、初乗り距離の短縮化と料金引き下げにより、新たな需要の掘り起こしを狙う方針が記された。国交省は来年度の実証実験で、実際のタクシー業者の収入への影響について検証する予定だ。