神戸で活躍、ウナギ焼き職人は28歳の米国人 アニメに導かれ来日5年、絶妙技にファンも
■兵庫初の「特定技能2号」 少子高齢化で人手不足が進む中、さまざまな分野で外国人労働者が増えている。神戸市内でウナギかば焼き職人として活躍するダニエル・ジンガニJr.さん(28)=同市長田区蓮宮通4=は大好きなアニメに導かれて5年前に米国から来日。今夏には熟練労働者の在留資格「特定技能2号」を外食業では兵庫で初めて取得し、永住の道も開けた。「お客さんが喜んでくれるのが一番うれしい」と滑らかな日本語でやりがいを語る。(笠原次郎) 【動画】無駄のない動きでウナギを焼き上げるダニエルさん 米国東部、ペンシルベニア州最大の都市フィラデルフィア生まれ。中学生時代にドラゴンボールやワンピースといったテレビアニメに夢中になり、高校生のときに独学で日本語の学習を開始。大学では経営学を専攻する傍ら日本語学習を続け、卒業後は父が経営する車の修理会社で2年働いて留学資金をためた。2019年10月に来日し、神戸市の日本語学校に入った。 1年後、小麦粉から生パスタを作るほどの料理の腕を生かそうと、うどん店のアルバイト面接へ。接客係としては会話力不足で不採用だったが、そのうどん店の社長に紹介されたのが、人手不足に悩んでいた長田区のウナギ専門店「西村川魚店(かわうおてん)」だった。西村大輔社長(41)に促されて食べたかば焼きに衝撃を受け、「食べたことない味でおいしかった。ここで働きたい」と職人の道を歩み始めた。 毎日朝早くに出社し、西村社長から調理法を学んだ。さばいた身に串を刺し、やわらかくなるまで両面をじっくりと焼く。蒸し器に入れて身をほぐし、再び焼いて、たれをかける。焼き加減を身に付けるのに苦労したが、めきめき腕が上達。2年前から正社員となり、今では12匹の火加減を同時に調節できるほどで、絶妙な焼き加減を好むファンも付いている。 さばき方も習得し、西村社長は「性格がとても真面目。仕事を理解しようとする気持ちがとても熱い」と評価する。7月には特定技能2号の試験に合格。外国人食品産業技能評価機構(東京)によると、外食業でこの試験に受かった米国人は全国2人目で兵庫県内では初めてだった。 西村社長は「周囲への気配りができるし、和を大事にする精神が日本人よりある。アメリカ人であることをつい忘れてしまうほど」とほほ笑む。ダニエルさんは「日本語が下手な自分にチャンスをくれた大輔さんに恩返しを」と意気込む。将来については「日本は思っていた通りのいい国だった。ずっと住み続けたい」と、日本で家族を持つことを夢見ている。 ■外国人材、初の200万人超08年比4・2倍 日本で働く外国人労働者数は右肩上がりで、2023年10月末時点で約205万人に上った。国が統計を発表し始めた08年の約49万人から4・2倍に増加。初めて200万人を超え、全雇用者の3・4%を占めた。 1993年に始まった技能実習制度は、発展途上国への技術移転を目的としたが、実態は安価な労働力を確保する手段となり、長時間労働や賃金の未払いなどの問題が頻発。失踪者も相次いだ。 少子高齢化に伴う深刻な労働力不足もあり、国は「人材確保」に方針転換。2019年には最長5年働ける在留資格「特定技能1号」の認定を開始した。熟練労働者が対象の「特定技能2号」も設けられ、資格取得者は家族の帯同と永住が認められている。 さらに国は技能実習制度廃止を決め、新たな労働者の受け入れ制度「育成就労」を創設。職場の変更も可能となり、送り出し国との交渉などの準備を経て27年にも新制度が始まる。 内閣府によると、23年10月末の外国人労働者は、ベトナム(25・3%)が最も多く、中国(19・4%)、フィリピン(11・1%)、ネパール(7・1%)、ブラジル(6・7%)と続く。食品製造や繊維工業など製造業で目立ち、非製造業では飲食、宿泊業が多い。