京都府が植物園などの施設料金ついに値上げへ 30年以上も据え置いていた「京都ならでは」の理由とは
京都府が府施設の使用料や手数料を値上げする方針を打ち出した。多くの都道府県では社会情勢に合わせて定期的な見直しを行っているが、府は30年以上も全面改定を見送り続けてきた。厳しい政治事情の下、値上げを積極的に検討してこなかったことが背景にある。 【写真】来年から値上げされる施設 ■多くの道府県は数年ごとに見直し 府によると、全国の都道府県のうち8割にあたる38道府県が使用料・手数料について、1~5年ごとに見直しを検討している。物価の乱高下や人件費の増減など社会情勢に合わせ、施設やサービスを利用しない人にも配慮して、受益者負担の適正化を図るためという。 滋賀県は約5年に1回、物価状況に合わせて施設やサービスの料金を見直している。琵琶湖博物館(草津市)はオープンした1996年の500円から600円、750円などと段階的に値上げしており、来年4月からは現行の800円から840円になる。県財政課は「定期的に見直さず、急に値上げすれば市民生活に大きな影響を及ぼしかねない」と説明する。 一方、京都府は消費税増税分の転嫁などを除き、全面的な改定を見送ってきた。そのため、例えば府立植物園の入園料(200円)は、兵庫県立フラワーセンター(500円)や宇治市植物公園(600円)など近郊の類似施設と比べても安価に抑えられてきた。 ■背景に「京都ならではの政治事情」 なぜ、府は改定してこなかったのか。西脇隆俊知事は21日の記者会見で、デフレ下で府職員の給与が上がらず行政コストが増えなかったことを一因に挙げ、「デフレ脱却を目指す中では、多くの府県のように改定すべきと判断した」と説明した。 ただ、京都ならではの政治事情も背景にある。京都では伝統的に知事野党の共産党勢力が強く、府知事選や府議選などの選挙を見据え「共産に攻撃材料を与える」などとして、公共料金や使用料などの値上げには神経質になってきた。府幹部の一人は「受益者負担について十分に議論する土壌がなかった」と明かす。 府以上に共産勢力が力を持つ京都市も長年、市バス・地下鉄のフリーパス券「敬老乗車証」の負担金引き上げを検討してきたが、選挙への配慮もあって何度も見送り、実施したのは「財政破綻宣言」を出した後の22年度になってからだった。 府の33年ぶりの使用料・手数料の全面改定は、結果的に物価高で府民生活が苦しい中での実施となった。西脇知事は「長い間改定しなかったことは若干反省しないといけない。今後は一定期間ごとに検証したい」と話した。