4浪立命館「漆職人」彼の“後悔し続けた”浪人生活 一方で「無駄ではなかった」とも語る彼のいま
それでも漆は特殊な技術で、それを生かしたいという思いがあったので工藝の仕事を探して、今に至るまで15年以上、ずっと工藝の会社に勤めながら生活を続けています。 この世界に遅くから飛び込んだのもあって、いろんな決断をするうえで『もうあと4年早く今の仕事に就いていればよかったな』と感じることが最近、多くなりました。 4年くらいすぐに取り戻すつもりで努力はしてきたつもりなのですが、現状取り戻せていないと感じるのは、後悔の念をいまだに引きずっていて、前向きになれていないからだと思います」
■今の家族がいるのは4年間の苦労のおかげ 「2浪で早稲田に入ったラグビー部の親友と最近もたまに会うのですが、彼は子どもたちに『1~2年は遠回りしても全然遠回りではない』と言っているそうです。彼がそう言えるのも、1~2年の間しっかり受験勉強したことで、今の自分の立場を得て、ある程度満足した生活を得られているという自負があるからだと思います。 でも私はしっかり勉強したという自負がないから、(子どもたちに)そうは言えません。若いほうが吸収が早く、経験を積むことがいちばん重要な仕事をする中で、私はダラダラしていた4年間のせいで、取り残されていると感じています」
ただ、今の仕事を通じて妻とも出会い、中1と小4の2人の子どもの父親でもあるK.Rさんは「今の家族がいるのはその4年のおかげだと思っている」と少しでも浪人を前向きに捉えるように、日々の生活を頑張っているそうです。 私生活では、4年ほど前にブラジル発祥のビーチスポーツであるフレスコボールにはまった彼は、クラブチームを立ち上げ、現在同競技のプレイヤーとしても活躍しています。 「浪人の4年がなかったら今の自分ではまったくないし、家族もいません。その4年があったからこそ、今があると思えるので無駄な経験ではなかったと思います。
このスポーツは1対1(もしくは1対2)で向かい合ってペアで行うラケット競技なのですが、ペアの2人が協力していかにうまく速く強くラリーを続けられるかを、ほかのペアとポイントで競います。敵を打ち負かすのではなく、敵は己にあります。どれだけ練習を積んで自己を高めていくか、相手と呼吸を合わせていけるかの積み重ねです」 ■生涯浪人だと感じている 「相手との関係性を大切にし築き上げていく、それはまるで人生の縮図のようでもあります。近ごろ、仕事などをしていくうえでも、人との付き合い方において、今の時代の流れに合わせなければならない状況は多々あると感じますが、持っていたい、曲げたくない信念はずっとあります。