キリン、ファンケルへのTOB成立-今後もM&Aは選択肢と社長
(ブルームバーグ): キリンホールディングス(HD)は、ファンケルに対する株式公開買い付け(TOB)が成立したと発表した。取得株式数はTOBへの応募下限として設定した約4112万株(33.82%)を上回る約5195万株(42.72%)株となった。
キリンHDが6月14日にTOBを公表して以降、当初の買付価格を上回る株価の推移もあり、価格引き上げと3度の期間延長を経ての成立となった。キリンHDは11月にファンケルの臨時株主総会の開催を要請し、株主併合を経て年内をめどに完全子会社化する予定だ。
同社はファンケルの完全子会社化によって、2023年に買収したオーストラリアの健康食品最大手ブラックモアズと共に、同社の第3の柱としてヘルスサイエンス事業を強化する。
キリンHDの南方健志社長は12日のインタビューで、完全子会社化を通じてまずはコスト削減などを進め、2年程度で商品の共同開発などを通じてトップラインを伸ばしていきたいと話した。
一定の規模への成長は見込めるものの、ヘルスサイエンス事業の目標を達成するには「インオーガニックなところで、合併・買収(M&A)も必要になってくるだろう」と話した。
一方、TOB期間のさなか、香港のヘッジファンドMY.アルファ・マネジメントHKアドバイザーズが保有比率を引き上げ、議決権ベースで10%超まで上昇したことが判明した。同社は、今回のTOBに応募したかどうかについてはコメントしなかった。
会社法は株式併合が決議された後でも、公正な価格で所有する株式を買い取ることを株主が請求し、買取価格の決定を裁判所に申し立てることができるため、MY.アルファの出方が注目される。一部株主の利益が不当に扱われたと裁判所が認めれば、買収する側のキリンHDは追加支払いを命じられる。
南方社長によると、MY.アルファとはコミュニケーションをとっているという。TOB成立を優先するため買い付け価格を引き上げたが、当初の価格である1株2690円は「今でもこれが適切な価格だと思っている」と強調。今後株式併合決議後の株式買取額は2800円で据え置く考えも示した。