「企業に特許を取られるとマズい…」京都大学が特許を取得せざるをえない衝撃のウラ事情…普通とは「180度違う発想」
「iPS細胞技術の最前線で何が起こっているのか」、「将棋をはじめとするゲームの棋士たちはなぜ人工知能に負けたのか」…もはや止めることのできない科学の激動は、すでに私たちの暮らしと世界を変貌させつつある。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 人間の「価値」が揺らぐこの時代の未来を見通すべく、“ノーベル賞科学者”山中伸弥と“史上最強棋士”羽生善治が語り合う『人間の未来AIの未来』(山中伸弥・羽生善治著)より抜粋してお届けする。 『人間の未来AIの未来』連載第4回 『なぜ研究者は「隠したがる」のか…天才科学者・山中伸弥が羽生善治に明かす、あまりに非効率な生命科学界の「ヤバいすぎる伝統」』より続く
生命科学での「特許の暴力」
羽生その特許についてもお聞きしたいんです。アメリカでは「パテント・トロール」と言って、他人から特許を買い集めて、その特許を侵害していると目をつけた相手から巨額の賠償金やライセンス料を得ようとする人たちが問題になりましたね。それは生命科学の世界では起こっていないんでしょうか。 山中いやいや、あります。そういうことを得意としている会社もありますよ。だから、僕たちは利益を得るためというよりも、どちらかと言うと防御のためにパテントを出願せざるを得ないんです。 羽生そうなんですか。 山中iPS細胞は基本的な技術です。それをプラットフォームにして、いろいろなアプリケーションを開発することが可能です。だからiPS細胞そのものを開発した僕たちからすると、できるだけ制約なく、できるだけ多くの人にその技術を使ってもらいたい。 でも羽生さんが言われたように、僕たちの特許とは別に、営利目的で特許出願をする会社もあります。そういうところで部分的にでも特許が成立してしまうと、iPS細胞の技術がすごく使いづらくなってしまいます。特許は本来、営利企業が開発した技術を独占して利益を確保するために取るものですけれど、僕たちからすると、まったく逆なんです。