「企業に特許を取られるとマズい…」京都大学が特許を取得せざるをえない衝撃のウラ事情…普通とは「180度違う発想」
私たちが「特許の値下げ」を主張した理由
山中京都大学のような公的機関が特許を取得して、ライセンス料をリーズナブルに設定する。そうすることによって、一企業の特許取得による技術の独占を防いで、いろいろな研究機関がより広く、自由にiPS細胞を使える環境を確保する。 同じ特許ですけれども、意味が180度違うわけです。実際、私たちは2017年、富士フィルムに細胞の開発・製造の特許料を下げるよう要請しました。 羽生特許は企業が持つよりも、大学が持ったほうが公益に資するんでしょうね。 山中大学が特許を持つのは大切ですね。企業は収益を上げる目的が優先されますから。新たに開発された薬や医療は異常に高額で、中には患者さん1人に1億円かかるものもあります。これは世界的な脅威です。 羽生企業は株主から利潤を求められるという事情も、もちろんあるでしょうね。 山中そうですね。それぞれのアプリケーションは、絶対に収益を上げないと発展していかないので。けれども、根幹のところ、基盤部分は、できるだけ広く使ってもらいたい。OSと一緒です。 以前、マイクロソフトはどんどんOSを公開して、アップルは閉鎖的でしたね。結果として、どちらがよかったのかはわかりませんが、基本的に基盤部分はオープンにするのが世の流れになっています。生命科学の分野でも、根本的な技術はできるだけ囲い込まずにやることが、研究の進展にとっては非常に大切だと思います。 『「AIが人間を事前に逮捕」人間とAIの協力の先に起こりうる衝撃的な「近未来」をノーベル賞科学者・山中伸弥が徹底解説』に続く
山中 伸弥、羽生 善治